おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

社会復帰めざして派遣会社とZoom面談

 


製薬工場での検品/製造/保守業務
未経験OK
9:00~17:45 休憩1H
土日祝休み・年間休日124日
月給21万円~
派遣社員として勤務
(のち派遣先企業にて社員登用あり)
仕事場は自宅から徒歩10分

タウンワークでこの条件の求人を見つけたとき「神か」と思った。21万円の神がたしかに現前していた。ニート生活も5ヵ月目に突入し、そろそろ本気で仕事を見つけないと、やばい気がする。僕は「無職」という負い目をいくらでも払拭する哲学的な武装をしているが、さすがに我が家の"時計"にとってのグリニッジ子午線、最強の公準たる妻の判断によって、「悠々自適な自由人」は容易に「クズ」へと成り下がる。

Zoomに映ったのは40代の男であった。「○○千尋さんがもうすぐ入室します」と表示されたので、(なんだ女の人か。面接といっても派遣登録だから軽い面談的なノリで、採用係のお姉さんが対応してくれるんだな…)と思ったら、がっつりスーツを着たおじさんだった。紺と赤のネクタイ、水色のシャツに灰色のニットベストを着ているのが、荒いピクセルで判る。千尋はZoom越しにマスクという奇妙な格好だった。素顔の僕は、茶会で茶碗をまわすがごとき無意味な作法が、このZoom会議にもあるのか…と一瞬おののいた。

この日のために初めて職務経歴書を書いた。前の職場は零細クリーニング工場であったが、そんなところでも、自分に書くべき「職務の経歴」を与えてくれるのだからありがたいことである。「職務経歴 経験少ない人」でググって、バイト歴まで記入した先人の資料を参考にしたのは言うまでもない。もし自分に働いた経験がほとんどない場合、面接や書類選考の前に、まず用意しなくちゃいけないこの「職務経歴書」が最大の障壁になるのだ…と、僕より立場の弱い求職者を想う。(そういう人は「履歴書不要!」の仕事に応募するだろうが…。だったらどうやって這い上がっていくのだろう?)

神が瓦解していく。千尋の「正直なお話」によれば、検品・包装の作業は、女性を優先的に案内してほしいと先方の企業から言われているそうだ。よくある「女性活躍中!」という名の「野郎は来てくれるな!」案件である。機械の保守作業は、医薬品製造業の経験者でも書類選考で落とされるそうだ。よって未経験の男性が応募できるのは、「製造」部門のみだという。

この部門には、条件に記載なきシフト制の夜勤がある。滅菌ルームで防護服を来て、薬剤の原料たる重い液体を扱う。千尋は「重量のある防護服をきて作業する、という作業環境が苦手でなければ…」と言葉を濁して言うが、圧迫感と息苦しさのなか、昼夜を問わず重労働をするのだろう。神のうるわしき大理石のような皮膚が剥がれ落ちて、ブラックサタンの鱗が見え隠れする。そうだよな。ラクして稼げる案件がタウンワークに落ちているはずもなく…好条件で人を集める常套手段だ。こんな釣りも見抜けなくなっているとは…。妻から夜勤をするなと言われているので、せっかく面談の時間までとってもらったが、辞退する流れになるだろうな~。

まあ社会復帰の第一歩としていい経験値を得たんじゃないか。初めてのZoom面談、初めての職務経歴書。話術も書面も稚拙なものだけど、それなりに通用するとわかったし。しかしZoom面談はおもしろい。上半身はネクタイにスーツで、下はダルダルの部屋着にモコモコスリッパでも、画面上はきわめて真面目な人間に映るもんな…w もしかして千尋も丸出しだったのでは。