おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

家庭の水質はこんなところでわかる

 

黒住(くろずみ)さんは、隣の頭のいい私立中学校に通っていた女の子で、登校ルートが同じだったので、よく目にした。キューティクルギンギンの黒髪で、皮下の青い静脈が透けて見えるほど、白い肌なのであった。そんな可憐な女子の名前が「くろずみ」というのが笑いのツボをチクチクとくすぐる。小学生ノリが抜けていない僕ら野卑な公立組は、相手にわざと聞こえるように「くろずみだ!」「く・ろ・ず・み」と声を出し、相手はサルを見る目で睨み返すのだった。

前に住んでいたところから新居に移って、ある変化を感じる。黒ずみである。

以前なら2,3日掃除をサボると歯ぎしり対策用のマウスピースのケースにカビがすぐ生えたのだが、今では容器にぬめりさえない。これだけでも「あれ?」と違和感を覚える。ブリタとかいうボトル浄水器の底に黒いもろもろが溜まらない。前の家では、洗面ボウルや風呂床を5日も掃除せずにほっておくと黒いカビやピンクぬめりだらけになったのに、そうはならない。

ここでなんとなく昔読んだ貯水槽の話が思い出される。手入れされていない共用住宅の貯水槽は危険だと告発する暴露調の記事だ。「カラスの死骸が入っているケースも…」とモザイク入りの写真がついていた。当時は、昭和37年仕込みのボロ団地に住んでいたので、ゲッと思ったが、うちだけは大丈夫だろう…と根拠なき自信で無視した。

団地のあとは、築20年の3階RC造のマンションに住んでいた。駐輪場の横に、クリーム色の巨大おでんの巾着のような貯水槽があった。どこかの住人が風呂でも入ると、グイーンとモーターが回り出す。家主の名誉のために言うが、年1回は「貯水槽の清掃のご案内」が通達され、当日は業者が軽トラで乗りつけて、巾着袋にまたがりホースを突っ込んで作業していた。だからさすがにカラスの死骸が入っているわけはないだろうが、水質低下につながるような積年の汚れはどうしてもあると思うのである。それが各部のカビ発生の早さに現れていたのではないか、とシャーロックホームズばりの推理を働かせるが、妻は「いいから掃除しろ」と一蹴する。
「ワトソン君、それはあんまりじゃないか」
「ワトソンはおめーだよ」
家が変わっても、この主従関係には一点の黒ずみもない。