おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

人生は必ずやりなおせる


朝起きてもやることがない。「家賃を振り込みにいけ、このクソ亭主」と毎月末の大役を拝命したので、駅へ出る。図書館に寄ってカフェで300円のアイスコーヒーを飲みながら借りた本を読んだ。壁沿いのお一人様用スペースはふだん勉強熱心な社会人がぶ厚い参考書をひろげて資格取得・昇進転職機会獲得にむけて打ち込んでいる修羅の空気が漂っているので近寄れないが、月曜午前とあって人が少なく、初めて座ってみると、三方を高い壁で仕切られた孤立空間のなんと心地よいことか。

 

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『シャブ屋の懺悔』って本を読んだんだけど、やっぱり僕は薬物をめぐる人間のドラマがなんか好きだな…w 薬物・男女・セックス・暴力・ヒモ・売春・逮捕・服役・離婚・崩壊・再生・失敗。こういう字面が並んでいるだけで、言っちゃ悪いけどワクワクするというか、映画じゃん…とそのスケール感とドラマ性にのめり込んじゃう。作者は元ヤクザでシャブの売人をやってた人で、いまは薬物中毒者を支援するためのグループを運営しているおじさんだ。

僕が一番感動したのは最後の付録にある、パチンコ屋の店長の手記である。

若い頃から不良やってヤクザの事務所に出入りして薬を売って使って…とお決まりのパターンを歩む。逮捕されて、更生を誓ってカタギの仕事を始める。結婚して子どもができる。奥さんが子育てに必死になっているときに、キャバクラに通って、そこで若い女と知り合って、その女と付き合う金をつくるためにまたシャブを売って、嬢とキメセクして…薬を売っているところが見つかり逮捕される。家族とは疎遠に。すべてを失った男は、また一からやりなおそうと近所のパチンコ屋の求人に片っ端から申し込むが、経歴を隠した住所不定無職の男を雇ってくれる店はひとつもない。最後の面接で自分がヤクザだったこと、刺青があること、薬による逮捕歴があること、妻子を失ったこと、すべて洗いざらい話した。すると店長は、「ここにはいろんな経歴を持っている人がいる。でも私が注目しているのは、あなたの過去ではなくて、これからどれだけまじめに働いてくれるか、一緒に店を盛り上げてくれるか、という点だけです」と、彼の更生への固い意志を読み取って雇ってくれることに。粗暴な客にツバと暴言を吐きかけられながらも、サービス業とはこういうものだ、と耐えて耐えて働いて、金を貯めて遠くにすむ子どもたちのクリスマスプレゼントにゲームボーイを買ってやる。たまに荷物を持ってきてくれる彼のことを、子どもたちは「たくはいびんのおじさん」と呼ぶ。まじめに仕事に取り組んでいると、ある日妻子からの手紙を受けとる。妻からは「もう一度やりなおそう」、子からは「パパになってください」とある。男は涙する…。みたいな!!

いやー感動すね。この本に収録されているエピソードは、多少バッドエンドのものあるけど、大半が薬によって人生狂わされたけど、やり直して幸せに生きてますって人のものばかりだ。薬物事犯の再犯率は高くて、ちゃんと更生できる人のほうが少ないと思うんだけど、そういう更生物語の数々は、薬で苦しむ人たちに、著者が繰り返し伝える「人生は必ずやりなおせる」ってメッセージを、生きていく勇気を与えてくれる。僕は覚せい剤とは無縁の生活を送ってるけど、がんばろ…って気になった。