おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

紙巻器で夫婦間最大の危機が訪れる

 

ここまで順調に進んできた家づくりだが、思わぬところで足止めをくっている。それが、トイレの紙巻器だ。トイレットペーパーホルダーだ。ハウスメーカーの標準仕様では、リクシルTOTOを選べたが、どれも紙巻器が2連なのだ。それを気に入らないのが妻だ。

「1個にできないんですか?」
「ご希望の収納棚セットになると、メーカーの規格に1個の設定がなくてですね… 」
「1個にできないなら、トイレの設備じたいを最初から考え直すくらいここは譲れないポイントなんです」
「もう一度メーカーに問い合わせてみます」
「どうしてもできないなら、自分で紙巻器を買ってつけることってできますか?」
「それはできます。施工時にネジ止め用の板を1枚かましまして…」
と激しい攻防をする横で、僕は無関心だった。妻に言わせると、どうして真剣に考えないんだ?と腹が立ったらしく、ふだんケンカしない夫婦だが、紙巻器の話題になるとすごく険悪な空気になる。たかが紙巻器でだ! 毎日トイレで紙巻器をみると、存在が憎らしくてたまらない。今まで30年間特に注目もせずに生きてきたこんなもののために、感情がかき乱されているとは。

妻の言い分はこうだ。
・2つだと見た目が格好悪い
・商業施設ならまだしも、個人宅で2つは見たことない
・2つ入れなきゃいけないのは便利どころか不便だ
・片方が極端に減ったりするのが嫌だ
・トータルして、お客さんが来たときにみっともない

僕の言い分
・用が果たせたら見た目は気にしない
・お客さんにどう思われようがいい
・それしかないなら標準仕様を受け入れる 
・1個に減らして追加料金を払う意味がわからない
・それに2個あったら、尻にうんこを挟んだまま替えのペーパー探しに奔走することもない

衝突の原因は、設備としての重要度の違いである。妻にとってトイレは家のなかで一番落ち着く場所で、漫画を読んだりスマホをいじったりして長時間過ごすから、できるだけ居心地いい空間にしたいと望む。だから便器の色から壁紙、収納スペースの広さ、カウンターの長さ、紙巻器の上にスマホを置いたときに、紙巻器のフタが斜めになってスマホがズレ落ちることがないよう支えとなる左右の柱の間隔にさえ注意を払う。

たいして僕はトイレなど1日10分と使わないのだから最低限の装備でいい。やったらすぐ出る。トイレ選びに時間と決断力を持っていかれていること自体癪にさわる、というスタンスだ。それを聞いて「どうでもいいなら1個でもいいだろ! いやならオメエは河原でクソ垂れろ。紙巻器買ったらネジ止めしてくれるな? DIYしたいとか言ってたんだからよ」みたいな論旨で追い詰められ、とかく事を荒立てたくない僕は「はいもちろんです」と引き下がった。あなどるなかれ紙巻器。繰れば繰るほど夫婦間にミシン目をつくる。