おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

仕事が忙しくて帰宅が21時を過ぎるという経験にとまどっています

 

 

どうも、かたむきみちおです。

最近本業が忙しくなってきました。副業があるような言い方ですが、僕の副業は昼寝です。

春が近づき、クリーニング屋もセールを始めて、工場はふだん500点だった処理点数が1500点に膨れ上がり、ここ2日、朝7時から夜9時まで働いてヘトヘトです。

暇な1月2月は、8時17時のきっちり定時、多くの場合は16時から16時半に上がれたりして、これで月10時間の見込み残業代がもらえて、準社員のくせにボーナスまでくれるなんて、いい会社だぜ!と浮かれていました。

衣替えの季節です。衣服を詰め込んだ、サンタが運ぶような大袋が、10も20も米俵のように横積みされている光景をみると、1袋の検品に15分、洗う時間が30分、洗って出てきたものをハンガーにかける作業5分、パートさんの仕上げが10分…と計算して、袋の数だけ乗算し、「うわあ絶対20時までかかる」と早くも予想がついて、気分が萎えてしまいます。この仕事の嫌なところは、これからこなすべき作業量が、山積みの袋によって視覚的な圧力を持つところです。家の洗濯でも衣類って結構かさばりますよね。それがお客さん数十人分のコートやらダウンジャケットになると、仕事量はいやでも誇張されて見えます。なんでセールなんかやるんだ、なんで業務量平準化のために点数制限を設けないんだ、圧倒的物量⇒スタッフの長時間労働⇒スピード重視&疲労による質低下⇒お客様満足度低下のサイクルでだれが喜ぶのか、そもそもなぜ人間は服を着るんだ!とわけのわからない怒りがこみ上げてきて、ストレスで裸で出歩いてしまいそうです。

事務職の妻の勤務時間は9−18時で、在宅勤務時は僕が帰っても仕事をしていますし、週2の出社時は帰りが19時になるので、僕よりずっと遅いです。ここ最近はそれが逆転して、僕のほうが遅いので「ごめん今日遅くなりそうだからご飯先に食べておいて」とLINEします。典型的な夫婦間の連絡じみていて、慣れずに笑っちゃいます。

妻のほうにも「お風呂の準備しといたから。入っている間にご飯作っておくから」と献身的な主婦像をなぞる様子があります。ほんとは仕事辞めて専業主婦やりたいんかなあ。本人は「さっさと私をパートにしてくれ」と言います。僕はバリバリ働く気は毛頭なく、妻が見つけてきた手作り看板の街なか求人、共同利用施設の管理人(4万6千円/月)に「やっと天職を見つけた!」と興奮しています。これは市内に点在する公民館のようなもので、僕も浪人時代によく友達と勉強しに行ったのですが、自宅を兼ねた造りの施設で、ピンクの手編みニット帽のおばちゃんがたまにストーブの灯油を換えに来るのみで、そのほかの業務といえば、管理人室という名の居間で、TVを観るくらいのものでした。それで月4万6千円とは、表面上は労働時間からして明らかに最低賃金法に反するようなブラック案件ですが(てかどうなってんの?)、超絶優良求人だと思われます。タウンワークにもでない闇バイトであり、光バイトです。今年の冬には大阪市内に建つ家へ引っ越す予定なのですが、そこから地元池田市の施設まで通いたいくらいです。

職場の内実を詳しく語るのは、個人バレのリスクはもとより、社会人としての倫理にもとると思いますが、僕は非社会的な人間ですし、まだ職場の人間には話していないですが、夏頃には退職を決めているので、恐れるものはなにもありません。

僕が勤める工場は、一家族の自営業で始まったクリーニング屋です。過当競争、市場縮小、服飾文化の更新、洗濯機の機能向上で、どんどん売上が下がり、この先どうしたものやら…という状態のところへ、京阪神の各地に店舗展開する大きめのクリーニング会社から、うちと手を組みませんか?と誘われ、そのホールディングスの傘下に一子会社として入りました。一家の父である元社長は60代、今の会社では顧問として報酬を得ています。いかにもあくどい経営陣、えばったお偉方を想像してしまいますが、パチンコ屋に出入りするしょぼたれたおっさんジャージ風情、職場に誰よりも早く来て、パートさんに混じって和気あいあいとしゃべり、誰よりも働いて帰ります。働かなくても、報酬が得られるのに、です。飲み屋で友人に「おれがそんな身分だったら毎日出社せずにゴロゴロすっけどなあ」と言うと、「いや、社長やってたってことは、どこからそのお金が発生しているか知っているから必死に働くんだと思うよ」と諭されました。大人としての人格の完成度を見せつけられました。でも松下幸之助も言ってますよね、「額に汗することを称えるのもいいが、額に汗のない涼しい姿も称えるべきであろう。怠けろというのではない。楽をするくふうをしろというのである」『道をひらく』と。僕は楽して稼ぐ人の方が偉いと思います。

早朝から働いて20時を過ぎてグッタリしていると、誰よりテキパキ働く超人の顧問が笑いながら「40年前はこんなもんじゃなかったよ」と言います。おれはいま当時を再現しているんだ。朝から昼飯抜きで休憩も挟まずに動き続けているだろう? 昼飯なし晩飯なしで、そのまま朝まで水3杯で働いたんだ。こけた頬に白髪の無精髭で言うわけですよ。いつもよりしんどいはずなのに、目に活力みなぎって生き生きしている。不覚にも、働く男の横顔ってかっこいいと思った。でもどこかね、この人はクリーニングに人生40年を捧げて、工場定休の水曜日も誰もいないのに毎週出社して週休0日、もう仕事以外にすることがないんだ、仕事が好きというより仕事に取り憑かれているんだ、身体が動かなくなるまで働いて働いて死んでいくんだ、と思うと悲痛でもあります。

働く姿に感激するのは、パートさんたちも同様です。暇なときは13時14時上がりですが、ここ数日は18~20時まで残業しています。主婦なので遅くなると「家のことしなあかん」と言って、早足で帰っていきます。僕なんかは帰宅後、妻がご飯を作るのを布団でゴロゴロしながら待ち、食べるだけ食べたら、あとは洗い物をする妻を尻目にそそくさともとの布団に帰って満腹ごろ寝の幸福感を噛みしめて屁をたれるクソ旦那に成り下がりますが、パート主婦たちは働いて帰ると、今度は寝るまでのあいだ、夫子供をお世話する主婦業に勤しむわけです。工場で服をたたむことには1時間あたり970円の時給が発生するのに、家の洗濯ものをたたんだりアイロンをかけたりすることにはお金が発生しないことをどう思うのでしょうか。仕上げた衣服を店舗へ届ける配送スタッフは、大半が年金をもらう高齢者です。ここにはパート主婦とバイト老人という、安価で調整しやすい労働力を頼って、僕ら壮年期の社員が現場を回し、本業として生活費を稼ぐ、という授業で習った労働問題の完全なミニチュア版があります。それを自明なこととして何ひとつ疑わずに朗らかに生きている市井の人々がいます。必死に働きたくない派の僕も、課業の多さと疲労と熱中のさなかに「やりがい」を幻視し、「充実感」を幻覚しています。働くのって思ったより悪くないのかな。