おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

家 ¥19,730,000

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(外構・水道・地盤改良ほか工事費用が加わって、推定総額2400万。オプション等なんやかんや追加があっても2500万には収まると思うが…。)

 

 

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(絶妙にダサいが、気取ってなくて好きだ。外観は未定のイメージである。大阪市内の細長い22坪の土地に、延床33坪の3階建てとなる。現在は、築80年くらいの祖母の空き家が建っている。)

 

 

長かった。昨年11月にはじめての住宅展示場というけったいな場所に足を踏み入れて、営業のしつこさと家づくりの煩わしさ、ふところの探り合いの疲れを知り、毎週日曜は2件の打ち合わせ、最終的に4社の見積もりをとって、ゼロホームに決めた。外壁の色からコンセントの位置まで決めなきゃいけないので、闘いはこれからだ。ひとまず最大の選択「どこで建てるか」を終え、ホッとしている。

 

・資金はどこから?

本契約は再来週である。工事請負申込書に氏名と勤務先を記載して、僕より稼いでいる新卒入社4年目の営業T氏に提出したとき、プライドがチリチリして年収を50万ほど盛ってしまった。最近株をやりはじめて、気分は億万長者、嫁に「エリート証券マンと結婚できてよかったね」と伝えると、「どこが? 底辺工場勤務じゃんw」とバカにされる。底辺といえど、少なくとも僕の職場では、アメリカ独立を知らない人はいても、人格が低劣な人間はひとりもいない。むしろ人が良いからこそ、正直者がバカをみる式のドツボにはまっている人も多い。ずる賢く生きなきゃ損だ、という皮肉な教訓が得られもする。

家計で最悪なのは有利子負債だ。「いまの家賃で、家が建ちます」の甘言に従うつもりはない。貯金の一部を家賃に充てるのと、巨額負債の一部を返済するのでは、額面は同じでも後者がより悪質である。僕はとにかく楽がしたい。借金返済のために35年間働き続ける「立派なお父さん」の誉れ高い謎の社会的圧力から逃れるためにもローンなしでの建設は必須の条件だ。

今回は、住宅取得資金贈与における最大非課税枠1500万円を祖母から、残りの費用を父母から相続時精算課税制度か、親子間融資で援助を受ける。相談した行政書士の「金は無色である。よってわれわれが色付けせねばならない」という表現は、彼の職業生活が垣間見える文学的なレトリックだ。「税金面でのケアをしてあげる」という発想も、ケアといえば老人ホームでの健康体操しか思い浮かばない僕には、金を優しく動かして落ち着かせる介助的なイメージが見えて新鮮だった。「税理士でも相続に強い人を選んだほうがいいですよ」。なるほど金の動くところに金の専門職あり。専門にも得意不得意ジャンルあり。分業社会の細密さには恐れ入る。

 

・マイドリーム

スタイルハウス、泉北ホーム、住友不動産ヘーベルハウス、ヤマダホームズ、アイ工務店、吉村一建設・ゆめすみか…どこで建てても、ふつうに住める家になる。車なんか目をつむって選んでも「風雨をしのいで目的地まで安全にたどり着ける」という車の基本効用は満たせる。家は屋根があって安全に眠れたらそれでいい。「ご主人のこだわりは?」と訊くが、そんなものない。理想もない。母は「まるでホテルみたいにきれいな家にしてほしい」と方方で語るが、だったらホテルに泊まれ、だ。

マイホームは、夢の暮らしを実現する装置である。家族の団らん、趣味の充実、やすらぎのとき……住宅メーカーCMの、ウソっぽい4人組のウソっぽい服装とウソっぽい食事風景が表象するウソくさい家庭の幸福感、そんなものは夢どころか第1スタジオの作業風景でしかない。持ち家があれば、賃貸アパートの家賃がなくなり、週40時間も働かなくて済む。青年時代から憧れた高等遊民の暮らしができる。妻は何かを察知して「仕事をやめるな」と言い聞かせる。いまさら船の浸水をティーカップですくって何になる。世の中には「難しいほうを選ぶ」ルールに従って成功した人物が多くいるが、僕は徹底的に楽なほうに流れて生きて、ほどほどに失敗してやろう。社会とは不思議なもので、ダメな奴の周りには、なぜかサポートしてくれる人が現れる。そういう人にすがって他力本願で生きていくのがこどおじのジャパニーズ・ドリームである。

 

・ゼロホームに決めたわけ

ゼロホームは、見積もりをとった会社(住友不動産・アイ工務店・吉村一建設)のなかで一番価格が安く、値段のわりに設備がよかった。僕は値段しかみない。借金して高い不自由を買うより、自己資金で安い自由を買うのだ。妻はキッチン・トイレ・お風呂の標準装備を最も気にしていた。僕は生活全般に興味がないので、水回りの設備も間取りも彼女に一任している。ネカフェのボックス席のような2畳に満たない名ばかり書斎スペースが、僕の存在価値である。

妻は営業マンの話し方、話の進め方、態度、見た目、洋服、マスクの毛羽立ち、仕事の速さ、メールの文面のどこかに「?」がつくようなら「なんか合わない」とばっさり切り捨てた。このあたりの理屈を超えた女の直観はまことに信ずべきものだと思っている。部長、所長、副所長とも面談した。なるほど業界歴も長くなれば、知恵も呼吸も身につき、脂がのってギラつくか、擦れ枯らしてガサツになるようで、すこし強引なやり手っぽい人は全員「合わなそうだから」という理由でお断りした。ゼロホームの担当者は、妻の「?」が最も少なく、口下手の僕が最も話しやすい人物だった。これから完成まで付き合うのだから、自分の言いたいことが言えるような相手のほうがいいわけである。自分より年上で役職が上になると、どっちが客か分からないくらい気をつかうので、しんどい。

担当のT氏は、仕事にたいする姿勢が泥臭かった。現地に何度も足を運んだ跡がみえた。ほかの営業マンは、Google Mapを使ったり、他社の間取り図を参考にして、自社の間取りを提案するような、手際の良さが目立った。T氏は、窓のバッティングを防ぐために隣家の窓の位置をA4用紙にメモしていたが、雨の日の作業で、紙がふやけてパリパリに乾いているのを恥ずかしそうにしていた。そういうつまらないことの積み重ねが大きな契約の決定因となるのだから可笑しなものである。人間の信用は口でなく、行動の端々に現れるものだと、年下の社会人に学ぶところ大であった。自分の職場にいるマジメな人たちもそうだが、人がひたむきに仕事に打ち込む姿には、見る人を熱くさせるものがある。仕事を給与/(労力+時間)のスコア以外で眺められるようになったのは、つい最近のことだ。


・値切り交渉わろた

営業マンはとかく学生コンパノリで「今日決めちゃいましょう」と決断をせまる。親知らずを抜くのでなし、そんな軽々しく決められるか、とそのたびに腹が立つ。「次の打ち合わせでは一応、書類を用意しています」と予告されていたので、覚悟はしていたが、いざ紙を前にすると怖くなった。母に目配せして「いったん持ち帰って家族で相談すると言ってくれ」と願ったが、当人はどうしたものか決めかねる様子だ。「今日サインしてもらえば、端数はお値引きします」と、あたかも最初から30万円を引く予定で設定したかのような本体価格2030万の端数切りを、最後の切り札として持ち出すが、母は首肯しなかった。T氏は「今日サインしても、次しても同じですよ。だったら早いほうがいいと思いませんか。皆さん迷われますが、もう勢いで決めるだけです」とたたみかける。母は「本当にお金がないんです。厳しくて厳しくて…。もうすぐ主人も定年で、年金がもらえるまでまだ数年もあるでしょう。Tさん、もう少しお安くなりませんか。今回の建て替えは母の実家ですが、旦那の実家のほうも築50年で、そろそろ建て替えを考えているんです。池田市の50坪の土地です。今回頑張っていただいたら、次もTさんに任せようと思っているんですよ。もっと安ければ、今日サインしてもいいと思いますが…」と声をつくって訴える。T氏は強気な姿勢が一転、ちょっと待ってくださいね…と数字をまじまじと見つめ直す。妻も「この総計の端数もいらなくないですか?」とやり出す。僕はこの間だんまりだ。「自分が値切られる立場だったら…」と思うと交渉できない。上司に相談してきます…といって帰ってきて提示された値段がタイトルの19,730,000円であった。もはや安いか高いか分かんねーよ。

 

引き渡しは11月の予定です。
無事に建ちますよーに!