おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

おにぎり3個セット ¥216

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店舗へ商品を納品するとき、近くに100円ローソンがあるので、そこで昼食を買って、地下駐車場で車中ひとり飯をするのが日課になっている。コンクリ壁がせまる圧迫的なグレーの世界で、小鳥のように丸まってちびちび小弁当を食うわびしさを「なんだかいいなあ」と感じ入る。しみったれの労働者だ。うまいうまい。安いほどに食う喜びがある。

ローソンでは、70代の警備員が、おにぎりの代金の端数を揃えるため、財布から小銭を出すのにいちいち手間取っていて、イライラする。なんとかペイで決済すれば、会計もスムーズで、お金だって数パーセント得するのに。そういう現代的な利得と無縁の老人を見ると、デジタル格差おそろしや、いや自分もまた情報技術の先端からみれば、洗濯板でもんぺをしごく古風な人間に映るのだろうと思い、後ろを振り返る。

クリーニングの取次店には個人宅の1階を改造し、売上の7割を本部に納め、残りを収入とする営業体制がある。好景気の時代には、街のタバコ屋の規模の店で2千万円の売上が立った。工場は朝4時まで稼動して7時に再開した、とかつての現役世代は語る。今は見る影もない。古色蒼然たる個人店におじゃますると、おばあちゃん家のにおいがする。棚にはケース入りの赤い着物の日本人形、岩みたいなブラウン管テレビ、自作のしょうもない布飾り、引き取り手が来ず20年のほこりを蓄積したしわくちゃビニールのダブルスーツ。あの頃のまま時が止まっている。彼らには変化がない。更新がない。代謝がない。歳をとったらこれまでの習慣、今まで通りのやり方を平和裏にこなすことに終始して、世の中の動きからどんどん孤立していく。老人が時代小説コーナーで肩を並べて立ち読みするのは、それがいつも変わらない安全な世界と既知のドラマを提供してくれるからだ。わしももうTikTokとか鬼滅の刃とかようわからん。Pairsだけは知っとる。

カルディ福袋に入っていたブルーマウンテンは店頭200g1480円の品。今朝はじめて飲んで、そのうまさにビビった。コーヒーじゃない。今まで僕が飲んできたコーヒーは、はいこれがコーヒーでしょ、というようなザ・コーヒー味一辺倒だったけど、これにはコーヒー的でない2,3種類の風味が、伸縮するゴムボールのように、あっちの頂点に緑を感じたら、次はこっちの頂点に赤を感じる、不思議な味の運動がある。飲んだ後に口のなかがネバつかない。コーヒーって味が濃いから口のなかがネバっこくなる飲み物だと思っていたが、どうやらそうでないらしい。妻も「口がくさくない」と言う。今までの安物は脂のガムみたいなものを飲んでいたのか。職場に持参したら、冷めてもうまい。前まではしかたなくカフェイン補充の苦水として飲んでいたが、これはきっちり味わうために飲むものだ。マスクのなかの吐息がうまい。飲み込んだあと舌に残った排水と唾液が混じったものさえうまい。もうスーパーで安売りされている粉には戻れない。コーヒーってこんなにうまかったんや。1杯60-70円って考えると、むしろ安いぞこれ!