おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

散髪 ¥1,200

 

ショッピングモールにあるSUUMOカウンターで、ゼロホームと同じ価格帯(建坪30坪で本体価格2000万円以下)のハウスメーカー、吉村一建設を紹介してもらう。転職と繁殖、もろもろの人生設計上、今年中に建てたいので、話は急ピッチだ。SUUMO担当のU女史も「時間がないので頑張ってもらうよう営業さんに伝えておきます」と話していた。間取りの提案など準備を急かせてしまい申し訳ない。先日はサンヨーホームズ営業の女性が、0℃を切る寒波のなか家にパンフレットを持ってきてくれ、説明を受けた。部屋で温かい飲み物でも供してゆっくりお話ししたかったし、向こうもそれ用に分厚いファイルを何冊も肩から提げていたが、テレビ前はマットレスを敷いて、ダラダラ食っちゃ寝したまま気絶するように眠れる正月シフトのままで、ダイニングテーブルのすぐ前に2組の布団がいやらしく乱れているので、人の目に毒である。玄関先の立ち話で済ませてしまい申し訳なかった。ハウスメーカーとの交渉では「いろいろしてもらって申し訳ない」「いい空気を壊しづらくて本音が言えない」など、遠慮はするだけ損であることを頭では理解できても、いい人いい客であろうとするから難しい。冷酷な人間がより多くを手にする理由を、お人好しのカモ側の心理から逆に洞察できるのであった。

妻がイオンで買い物する間にQBハウスで散髪した。グレーのフリース上下の部屋着で、鏡に2ヵ月伸び放題の蓬髪を見たときは、パチスロで生きるヒモ同然でお気に入りだったが、いよいよリンスをしないと寝癖が直らなくなり、職場で蛇口をひねって髪を直すのが虚しくなってきた。散髪のタイミングは、リンス・ドライヤーの煩わしさが髪を切る面倒を超えた瞬間である。同じ散髪代を払うなら、できるだけ伸ばした髪を、できるだけ短く切ってもらうのが得だから毎回「短め」を注文する、と妻に話したら「ケチくさ!小さ!」と叫んでいた。担当は、5人体制のなか1番年配の60代、禿頭の男であった。理容師の髪は誰が切っているんだ問題はいつも不思議だ。この男に限ってはもう切るところがほとんど残っておらず、疑問の余地がない。僕は髪型には頓着しないが、できるだけ同年代の人間に同年代の美意識で切ってもらいたいと願うほうだ。年配の理容師は、平地でも階段を駆けるように息が荒い。耳元のスーハー吐息に、ASMRか!と思わされた。くしは頭皮にずばずば刺さり、乾かす手つきは親が子どもにするようにめちゃくちゃで、思わず「痛ッ」と言ってしまいそうだ。ああこの人はもう歳なんだなあ、ドミノ倒しのように店が潰れる通りで自分の店をたたみ、生活費の足しになればとここでパートしているんかなあ、年下の先輩からアイツは使えない奴だみたいに思われているのかなあ、おぼつかぬ手元から落としたくしを髪の毛と一緒にほうきで掃いて蹴るように角の吸引器に押し込むガサツさはまるで繊細さが求められる仕事の理念と相反するものなあ、たかだか1200円のローコストベルトコンベア式理髪業とはヒツジの毛刈りに似た畜産業に属する仕事なのだから、肉用牛が切られ方に文句を言うようなもので、まともなサービスを期待するほうが間違っているんかなあ、といろいろ考えてしまった。

カルディでコーヒー福袋豪華セット200g×3パック3,600円を買う。4種類の福袋のうち、これだけが売れ残りなのは、やはり値段のせいか。ふだん阪急オアシスで800g598円のものしか飲まずコーヒー党を公言しているが、妻から「お前の趣味は全面的に浅い」と極言されてしまい、今年は街の個人経営コーヒーショップで個別豆デビューを始めてみようと考えていた。個人店はやはり店主との会話が密になるので、非マニュアルの個別具体的なやりとりが要求されるぶん、チェーン店の従業員を相手にするより、コミュ障としては購入のハードルが高い。そこへきて選定、会話の手間を省いてくれる福袋。しかし600gで3,600円って高すぎないか?と冷静になると、コーヒーを飲む前から目が覚めるのであった。