おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

家に帰ればふつうのハウス

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自分の名前と「邸」が結びつくとは思いもよらない。相談カウンターでピンクネイルのお嬢から30分説明を受ければ、誰でも作ってもらえるペライチであるが、これだけで家が建つ気配がする。

舞い上がって巨額の負債をしょい込み、35年も砂利に正座の暮らしはご免である。夫婦共働きで世帯年収600万あれば、4000万円借りられますよ、との概算に、ちょっと待て4000万いうたら手堅い馬連で3倍の1億2千万やないか、年末ジャンボ1億買い占めて10億の上がり、「金持ちになるには」という講座とサロン運営で毎月1000万の儲けが出る、姉ちゃんアパート10棟たてるど!と小躍りした。

空き家の祖母宅は築60年のボロ屋、土地があるなら建て替えでもしたらどうだいと母に打診され、家賃を払い続けるのも損、いっそ建てるか、という具合で話が進む。毎週日曜の休みが、ハウスメーカーとの打ち合わせに溶け、早くもげんなりだ。面倒だし、このまま賃貸に住むか、地震でぶっ壊れても火事にあっても、引っ越せばいいだけだし、と思っていたのだが…

 

・幼稚園来の友人が建てた家を見る

友人で家を建てたのがD氏1人だったので、1年ぶりのLINE通話で家を見せて欲しいと直訴し、後日見学とあいなる。僕の住む池田市から、山間部へ車を走らせ20分、のどかな新興住宅地に入った。田畑の沿道、田舎名物ギリギリの車屋、コンクリ固めで灰色ワッフルの山肌、ショッピングセンターとみまがう巨大パチンコ店を指差し「俺ここに打ちに来てんねん」とD氏。角地に建った2階建ての黒い邸宅は、前4台の駐車スペースに夫妻それぞれの車をハの字にテキトーに停めてまだ余裕ある。「このへんはみんな2台持ちやで」と語る。塾下のチャリみたいにミニバン、軽、コンパクトカーが並んでいた。1階に駐車場を設けるかどうか、そもそも将来的に車を買う可能性があるか否かで頭を悩ませる僕ら夫婦がひどくちっぽけに感じた。SUVに乗っている奴らはどうかしている、日本じゃ未舗装路を走るほうが難しいのに、どうしてなんちゃってオフロード向きの大径ホイルとデカい車体がいるんだ、とせせら笑っていたが、D氏のランドクルーザーが堂々と邸宅前に停まっている、そのトータルの画が「デカい男」「いいパパ」「頼りになる旦那」というポジティブな父性をこれでもかと体現していて、映えた。シャッター付きのインナーガレージに100万超の国産スーパースポーツバイク、奥さんのフルカウルのバイクが2台、向かい合わせに停めてある。それがリビングから見える。マシンにつながるケーブルはバッテリー上がりを防ぐものだろうか? 穴あきのウッドパネルに電動ドライバー、スパナといった整備工具が整然とかけてある。棚には派手なフルフェイスヘルメットが斜めをみるように並び、ハンガーには、人の脱皮か!と恐怖するほど人型のままのレザースーツが何着も掛けてあった。休日にサーキット走行するのが趣味だという。大型SUVで、バイクを運搬する台車を牽引してだ。「休日の過ごし方で、毎日の充実感は歴然と変わってくる」と言う。休みとあらば、二度寝と他人のゲーム配信、図書館とブログくらいしか時間のつぶしようがなく、午後4時には「明日も仕事か…」と人生を半分奪われた気持ちになる僕には、耳の痛い話である。高校生の頃、僕はD氏と毎日バイクで走った。2人とも原付から中型に乗り換えた。やがて僕は原付に戻り、D氏は大型免許をとってスポーツバイクに乗った。僕もいつかは…と思いつつ30代になった。

「俺はまだ一緒にツーリング行くのを諦めてないで」
僕に語る友人。家、仕事、趣味の充実。すべて手に入れたようにみえるD氏。幼い頃は何だったら僕のほうが、遊びでも勉強でも彼をリードする側だったのに、ずいぶんと差をつけられちまったなあ。尊敬する。歴史上、文学史上の人物なんかより、全然リアルに尊敬するわ。僕はどう生きたいのか、なにをどう楽しんだらいいのか、自分でもさっぱり分からないよ。