おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

ルーンショット

 

フォトウェディングとかいうやつの衣装合わせに行ってきました。式を挙げる金もないし、状況でもないので、せめて新婚のうちに写真を撮っておこうという魂胆らしいです。他人事なのは、予約からコース選びから日取りから何から、ぜんぶ細君が決めたことで、なにも知らないまま、知らない場所へ、採寸のために体を借り出された商売女の気持ちだからです。「あなたに何言っても、撮りたくないって言うから」。さすが鋭いですね、僕は写真が好きじゃないんです。観光地をバックに整列してカメラを見る、あのジッとする数秒が永遠の退屈に感じます。そう、写真とは退屈の凝結なのです。

 

 

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新郎さまはこちらにおかけください、と言われました。どうして椅子を指定されるのか不思議でしたが、新婦の着替えが見えないように部屋の中央からカーテンを引くためだったんですね。入浴の準備でパンツやタオルを取るために、部屋をおいど丸出しで歩き回る新婦さまの姿をふだん目にしている僕からすれば、いまさらなにを隠すことがあるのか、と手続きのまどろっこしさに憤ってしまいますが、これが男女の神聖な儀式に底流する奥ゆかしさというものでしょう。

 

 

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この空間が僕の世界です。

 

 

 

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こんなところで本を紹介するのは恐縮ですが、この『ルーンショット』は最近読んだ本のなかでは断トツにおもしろいです。

敵機敵艦を見つけるレーダー機器は、軍に採用される数十年前にはすでに発見されていたのに、なぜ「バカげたアイデアだ」と見過ごされてきたのか。実効的な治療薬はなぜ無視されるのか。ポラロイドカメラは優れた化学的成果であり、商業的にも大成功したにもかかわらず、なぜポラロイド社は破綻したのか。どうして世界最大の航空会社パンナムは衰退し、後手のアメリカン航空は生き残ったのか。ルーンショットとフランチャイズ動的平衡、変なアイデアとその普及拡大が、氷と水の相転移(0℃の状況では、水のまわりで氷は溶け、氷のまわりで水が凍っていき、全体のバランスがとれる)の例えを用いて、発明家が独走しても、営業マンが気張りすぎても、事業は破滅に向かうよ?ってことをなんとなくわかった気にさせてくれる本です。

人間生活にも両面いりますよね。僕にとっちゃ、フォトウェディングとやらは水であり、布団に丸まって読む詩集に哲学書が氷なわけです。やがて水は氷に、氷は水に。写真を撮るだけでトータル15万。僕はもう沸騰しそうです。