おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

呪われたチャリ

また事故った。
前回の事故(『当たり屋稼業に精が出る』)より半年である。

仕事先から昼食時に家まで帰るときだ。家は、車が満足に行き来できない隘路の先にむりやり建てたなんちゃってマンション風アパートである。せせこましい十字路の連続を「なにを食べようか」と考えながらのんきに進んでいると、横からピザの宅配バイクに突っ込まれた。そのときおれはこう思ったのさ、「ピザを頼んだ覚えはないってね」。

前輪にバイクのタイヤが接触しただけで双方無事。運転手は19歳の大学生で、週3日は音ゲーしにゲーセン通い、たまに釣りもしますといった感じの、キャバクラとか風俗を不潔なものとして高潔な孤独趣味に沈潜している、サラサラヘアーの政策学部生然とした青年で、「申し訳ありません」と平謝り。店、警察に電話する指がスマホの上でふるふる震えていた。僕にもピザの宅配バイトをしていた友達が何人かいたので、彼の焦燥に同情してしまい、「気にしないでください。見通し悪い交差点にカーブミラーをつけないほうが悪いんです」と言って、責任の半分を道路行政に押しつけた。

事故処理で昼食は抜きである。ご飯が食べたいあまりに、警察を呼ぼうとする彼をさえぎって「やっぱり急いでるんで行きます」と言ったが、「ダメです。こういうのはきっちりやっておかないと」と逆に説教を食らってしまった。やってきたミニバイクの警官はスマホ片手に僕らをちらち見ながら、「この辺で事故があったんですけど、なにか見ました?」と訊く。はた目には配達バイトをサボる店員とその友達のパチプロやってるフリーターに映ったのだろうか。前に事故したときにやってきた女性警官は僕をみて「働いてますか?」と訊いた。住所不定無職感は所帯を持っても拭えないらしい。

配達バイクに積んでいるはずの自賠責保険の書類がない、というのでピザ屋の社員を名乗る男がやってきた。ヘルメットからはみ出したえり足を金髪に染めたニキビ面の太っちょである。僕は表立って髪の毛や風体で人を判断することはない(僕の職場には髪の毛が紫や青の人がいる。どんな仕事やねん)が、この社員が来るなり「すんません、どっかに書類落としてきました」と言って、きた道をバイクで帰っていった。おい! 紙1枚運べない奴がどうやってピザを届けんねん!

仕事を終えて職場を出るとき、自転車がパンクしていた。めんどくせー。前回の事故ではカゴやらペダルやらの傷がついたパーツの修理見積もりを出してもらったが、今回もまた同じことをするのか、と思って自転車屋にいくと、修理は5分、代金1,000円。相手の保険会社の石川さんも「ハッセンエンですね」「センエンです」「ハッセンエン」「違います、いっせんえんです、いち」「あっセンエンw」とあまりのしょうもさなさに狼狽していた。年始の初売りセールで買ってからすでに2回の衝突事故に巻き込まれている呪われたチャリ、もう金をかけずにさっさと乗り換えたいのである。