おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

恋愛のことは嫌いでも、好きのことは嫌いにならないで

 

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恋愛なんて、柄のないホウキぐらいくだらないものだと思っているが(ちょっと待て、靴裏の掃除には使えるだろう)、ちょっぴり人と付き合うのもいいなと思った話をする。

のろけ話だと思ってくれて結構、こんな話をするより、「クラッチのセンターロックナットが外せなかったのでクラッチナットレンチを買いました」とスクーター通勤おじさんたちが好みそうな、地味が過ぎて俳味すらただよう素人のバイク整備日誌をつけているほうが落ち着くとだけ言っておく。

僕の彼女はことあるごとに、ことなきときも、起きてすぐ、寝てイビキをかき出す直前まで「好きだよ」「ああ好きだなあ」「好きっちゃんよー」「あやちゃんね、ゆっちゃんのこと好きなん」と言ってくる。字にするとバカらしいが、真面目である。僕は5回に1回くらいの割合で「俺も好きだよ」と返す。毎度言うとくたびれるし、好きでないタイミングで(嫌うとかじゃなくて、全然そんなこと考えていないときに)好きと言うのでは、嘘になってしまうので、ほんとに今好きかもしれん、よし好きだな?というときに好きと言う。

僕は中学生ではない。30歳の男女が抱き合ってささやくところを想像すると、おぞましい。だいたい30歳にして「彼女」と言うのにも、羞恥を覚える。これも押し寄せる常識の波か。「恋愛に齢は無関係」を信条にしないと、老人ホームでの交際に困る、と訳のわからない心配をしたりする。

「どうしてこんなに好きって言うかわかる? ちゃーちゃん」
「好きだからでしょ」
「違うよ。私はちゃーちゃんの心を育ててるの」
心…。植木と一緒で、好きの水やりで僕の心を育てているんだと。これを言われたとき、世俗に無感動な僕でもさすがに心が動いたわ。僕は少しずつ人間的な心を回復しつつあるのかなあ。雲がきれいだ、花が輝く、ちょうちょさんもヒラヒラ飛ぶ、ネコさん茂みでお昼寝中、ああ楽しいな、生きるって悪くないかもな、今日も一日頑張るか、明日もめいっぱい楽しもう、なんてお花畑の思考に一瞬でもなりそうになるもんな。人を好きになるっていいな、人から好かれるって気持ちいいな。ひとりの人間からモテりゃそれでいいんだ。恋愛って言うから気持ち悪くなるのであって、人を好きになるって素晴らしいことなんだよ。

(文・かたむきみちお/恋愛コラムニスト)