おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

図書館は休館し、書店は休業す

 

 

図書館の休館は延びると思ったが、街に唯一の書店が時短営業からの定休日追加からのGW休業。図書館が閉まってから、危機感はあったが、本格的に読書難民と化している。

借りても読まずの不良利用者だ。でも、本を選ぶときのワクワク感、「はじめに」と「おわりに」だけで味わえる読んだ感、新しいものをどんどん取り込んでる感(知識の更新がないことを老人と言うのである)の喪失が、わが読書ライフに暗い影を投げかけている。家にある読まずの旧書を先に読まんかい、という話でもある。

Kindle Unlimitedの再再再登録だ。光文社古典新訳文庫で、マルサスの『人口論』やプラトンの『プロタゴラス』を読むのではなく、裏モノJAPANの『ヤバイ悪グッズ80』『なぜか閉鎖されないヤバすぎ裏サイト50』『ダメ人生を変える夢の合法薬30』を読んでしまう。おかげでトップページの「購入履歴に基づくおすすめ商品」に、同シリーズの『なるほど納得! SEXテク60』等のピンク文字のエロ雑誌がわんさと列挙され、同居の彼女に白眼視される。おい、おれは大学院(中退)だぞ、もっと高尚な本が並ぶはずなのに、くそ無情なアルゴリズムだ、実際の人間性を表示するのがお得意さまときたもんだ。AIだって人の見栄を、人類の栄誉を、おもんぱかれというのである。

 

良かったのは楠木建の『戦略読書日記』。

 

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市場戦略の専門家(教授)が、経営にまつわる本、といっても難しい学術書ではなく、ユニクロ柳井正『一勝九敗』、建築家の隈研吾『10宅論』、岡田斗司夫の『レコーディング・ダイエット』みたいな一般書から、経営戦略や、市場で生き残るワザを、ほどほどに興味深い著者の長話とともに考察していく、ベーコン・レタス・バーガーである。僕がこんなものを読むのは、どこかで経営者になりたい、社長と呼ばれたいと思い、で、どんな事業を展開したいの?と一歩踏み込まれると、何も答える準備のない典型的で徹底的、決定的な雇われ人の思考を保持しており、かつ、副題にある通りの「本質を抉りだす思考のセンス」にだけは満ちていると思われたい平均的で規範的、表面的な自称才人の俗物性を具備することの証明である。ところで、最もビビッときたのは、経営・思考センスとは無関係のおまけ「僕の読書スタイル」のインタビューだ。

 

曰く、
ベッドで読むのが基本ですね。あとは寝椅子。休日になると下手をすると一〇時間以上ぶっ続けで読むから座っていると疲れるんです。寝椅子はル・コルビュジエのLC4(シェーズ・ロング)がベストというのが僕の結論。これは読書や映画や音楽鑑賞のためにあるような傑作です。

曰く、
歯を磨くときも必ず読んでいる。本を読みながら歯を磨きたい人は電動歯ブラシを使うといいですよ。手を動かさなくていいから、読みやすい。

 

コルビュジエのLC4は、それはそれは寝心地の良さそうな一脚で、これで本が読めたらどれだけ幸せか、と想像するだけでうっとりするデザインだが、大型の寝椅子を置くにふさわしい家もスペースもなく、年収1千万円の大学教授ならいざ知らず、ただ掛けて寝るだけの家具に10万円も払う余裕は工場勤務の準社員になく、真似ができるとすれば、電動歯ブラシである。事実、歯磨き中に本を読む僕は、手を動かすと視界がブレるし、ページも繰りにくいことに長年痛痒を覚えてきた。さすがに数千円の電動歯ブラシを読書の為だけに買うのは勿体ないと思うだけの理性と財政があったので、スーパーで売っているおもちゃ版を300円で手に入れ、教授とほとんど同等の読書スタイルを整えたわけだが、慣れない電動のために、ブラシがちゃんと歯に当たっているか心配で、歯垢の除去力が手磨きのちょうど10倍あるかどうか計算するのに必死で、鏡の前に立たずば磨けなくなってしまった。もう読書どころでなくなってしまった。便利さがときに幸福を損なう、という当たり前の教訓を、この本に学ばされたのである。