おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

初任給だ!

 

生まれて初めてもらう月給が、明細をウキウキして持って帰って未開封のまま神棚に供え(そんなものないが)、こんな僕を雇ってくれた社長、いっしょに働いてくれる仲間、日々の事業を成立させる設備、またその機械類をメンテナンスする人、備品を買ってくれる人、届けてくれる人、アイスのど飴ホームパイを常備してくれる工場長の奥さん、ご飯を作ってくれる彼女、2万円のPCを5万だと申告しても、型式もググらずにお金を払ってくれるお母さん、またその金を捻出しているお父さん、そして何より仕事を作ってくれるお客さまに感謝して、明細にハサミを入れる。二つ折りで総支給額を最後まで見せないのは憎い演出だ。映画のラストにタイトルを持ってくるはやりの手法だな、とか何とか言いつつ目にした数字は140,***。おい、バイト時代(13万)と少しも変わらねえじゃねえか。それもそのはず、給与はすべてかつてと同じ時給1,000円で計算されているのだ。聞いてた話と違う。信用を裏切られた怒りのあまり涙目になった。これまでの労働のモチベは、ふふふ、時給計算すれば、ここにいるパートさんの誰よりもいい額を貰えるんだ、しかも事務所に座って何もしていない時間についても支払われるんだぜ、と得意になれることだけだったのに、この1ヵ月ほんとうにバイトとして働いていたとは。気持ちを見透かされていたのか。僕は神棚をめちゃくちゃに壊し、すべての関係者を憎悪し、勤労意欲を失くした。

夜、寝る前の日課の読書中も、どうやって文句を言ってやろうか、「給料は月給制で、基本給が…」と話した担当者にどう詰問して、うろたえさせてやろうか、仮に差額がのちに振り込まれるようになったとしても、支払いの遅れたぶんの遅延損害金を年率何%にしてやろうか、と対抗シミュレーションがめらめら膨らんで、本どころではなかった。炎のかなり後景に、「おやおやそんなにいきり立って。田舎の中小企業に勤めるとは、ずさんな労務管理に堪えることだぞよ」とつぶやくお地蔵さんもいたにはいたが。

翌日、開口一番に「金金金だ、給料よこせ」と詰め寄るのでは、夏休みだよりの注意「拝金主義に陥らないようにしましょう」を破ってしまうので、仕事終わりにあっそういえばのトーンでしれっと伝えてみた。確認を経たのち、給料日の今日、前出の給料と差額がいっしょに振り込まれていた。わくわくして見る残高の追加額、2万円弱。僕の懊悩、激昂、交渉、悲嘆、感涙はすべてこの2万円弱のために。2万円弱、これを勝ちとるために闘うのが、労働者のリアルさ。