おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

青の洞窟

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うちの電マなんだけどさ、あれ、お宅には電マない? ほら、それ君も持ってるじゃないか、その携帯電マ。え、携帯電話? なんだそれ。

疲れる現代人の家にはかならず人数分だけ置いてある癒やしの道具。来世紀の教科書には平成令和の文化事情として記述されているはずだよ。僕の好きなさらば青春の光のネタに、電マ工場のおじさんとAV監督の対決コントがある。工場のおじさんが「この製品は本来、家族のいるリビングに堂々と置けるものだったんだ」と涙ながらに訴える感動の爆笑シーンがある。もっともだ。マッサージ機なんだから。

朝から疲れているバカはおらん。自然、使用は夜である。これから体をいたわろう、というとき蛍光灯がバキバキに光ったリビングで横たわる痴愚もおらん。よって使用は寝室の、しかもほとんど灯りをつけない暗闇においてである。そこで、うちの電マなんだけどさ、となる。

半透明の丸いシリコン製のゴムボタン(TVのリモコンと同じものを想像してもらえればよい)の下に、青色LEDが埋め込まれていて、これが通電のあいだ、ずっとチッカチッカと点滅し続ける。そのまばゆさといったらない。その明るさといったら、照明を落とした部屋が半分、青一色に染まるくらいである。外から覗けば、ストロボの明滅に合わせて、青く光る男が、カクカクとコマ送りになって作業する様子が映るであろう。

そう、作業なのである。本来、動物にセットされた本能が肉体を駆動する、衝動的で情熱的な、熱波と電撃の行為であるはずのそれは、うす暗い深夜工場のラインで、青いランプの工具を握り、2本の鉄骨を中央のネジ穴で接合するような、計画と退屈の労働に変わる。部屋には、2人しかいないのに、僕は夜な夜なこの工具で自動車を組み立てる工員の列を何百、何千と、壁に透けた家々の、巨大工場の下に見るのである。コンベヤに乗って流れでる女性の下肢を、淡々と電気ドリルで組み上げる真顔の男たちの行列を…。