おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

テレビを見るようになった

 

ネットに繋がらない生活が、心身健康上好ましいともてはやされるが、引っ越し先の家の回線工事がまだで、ネットなき生活を強いられている。いりびたりだった動画サイトから離脱し、音楽配信アプリもSNSも開かない。ネットを使わなくなった分、本を読んだり、文章を書いたり、散歩したり、出かけたり、人と会ったりすることで、時間を有意義に使えるようになった、と思ったら大間違いである。

ネットしないだけ、テレビを見る時間が増えた。かつて実家で1週間に2分と座らなかったテレビ前へ、日に5時間張りついている。

通販と野球中継がおもしろい。モリブデンバナジウム鋼のなんでも切れる包丁が、パンやトマトをまっぷたつにすると、試したくなる。今ならもう1本、さらにミニ包丁までついて、お値段そのまま3,980円とくれば、これはもう買いである。いやあ、テレビ前にいるだけで、こんな買い物ができるとは、いい時代になったものだ、とか思う。僕が小学校を毎日遅刻したのは、8時過ぎのテレビショッピングのせいだった。

野球中継は、観たいテレビ番組を消したり、遅らせたりする迷惑なやつだ。それが昼下がりの退屈や、夕刻の寂しさをごまかしてくれる最適の娯楽になるとは思いもしなかった。

ジリジリした攻防の末に、サヨナラホームランが飛び出すと、鳥肌が立つ。ベタなシーンで感動してしまう自分の単純さが嫌になる。ももひきで野球にビールというオヤジ像にだけは似たくないと思ったが、今やブリーフを穿くかボクサーを穿くかといった微差に落ち着いた。

9回裏、1点でゲームがひっくり返る場面で、強打者が打席に入る。さてこれからどうなる、と引きつけたところで、時間の都合で放送が終わると、昔はあれだけ嫌っていたのに、どうして延長しないんだ、と腹が立つ。ひいきのチームもないので、あとで試合結果を調べることはない。スクイズやエンドラン、貯金・借金の意味がわからない。攻守の戦略、監督の思惑、解説者の偉そうな態度がわからない。ちょっと土がつくと替えられるボールの行方、やたらとツバを吐く外国人選手の噛みタバコの味、キャッチャーや審判のうしろに映る半地下の小部屋の用途がわからない。野球なんて、みんなホームランを打てばいいゲームではないのか?