おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

読書中坐癖

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はじめから本を紹介する目的で書かれた文章より、流れにのって参考図書の出るほうが購買意欲そそられる。

中島らもの『砂をつかんで立ち上がれ』から「そう。おれはシュールレアリスム青年だったのである。若い頃から三十過ぎまで、シュールレアリスムにぞっこんだった」と語るところで、アンドレ・ブルトンバタイユコクトール・クレジオボードレール、ピエール・ド・マンディアルグの名が出る。すべて読んだ。ブルトンは『シュルレアリスム宣言』を読んでも、感心したのは「コロンブスアメリカを発見するためには、狂人たちをつれて船出しなければならなかった」の一文のみで、あとは想像力だの正義だの幸福だのなんやかやわからない話が続くので、読めたものじゃない。激安自販機で50円の缶コーヒーを買う青年が、小銭を排水口に落としてしまい、結局100円かけてまずいコーヒーを手にする様子のほうがまだシュールである。バタイユコクトール・クレジオも読めば文字が網膜うわ滑り、ボードレールに至っては夜道に白く伸びるガードレールのことで頭がいっぱいになる。マンディアルグ『すべては消えゆく』は特べつエロいと聞いていたのに、おやじが地下鉄に乗ったり降りたりするだけで、萎えてしまった。これなら勃起したペニスそっくりのプラボトルが勃ち並ぶドレッシング売り場を歩いたほうがまだエロい気分になる。らもはシュールを語る際によく、「手術台の上におけるミシンと洋傘の出逢い」というフランス詩を引く。あるはずのない妙な組み合わせのことだ。この出逢いに共感できる人はシュールの才能があるが、僕にはわからない。ミシンと洋傘、縫うものと縫われるものが、あたかも外科手術における医者と患者のように手術台で相たいするところが笑いのポイントなのか。それとも事故った車から、洋裁屋の店主ではなくミシンと洋傘だけが間違って搬送されてきたコントか。自分のツボがシュール派か、なんでやねん君それ田楽いもやないかいなのベタ派に属するかは本を読むまでわからない。

 

恐ろしいのはまだ例1ということだ。ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』では、高校生だった著者がものの存在の謎にであうきっかけとなったハイデガー形而上学入門』(「なぜまったく何もないのではなく、何かがあるのか?」)。読み出すとすぐ「この講義は『存在と時間』の中で言われていることを出発点として…」始められるので、当然ハイデガーの名著『存在と時間』を読まねばならない。僕は文庫版を150Pでやめた。正確にいうと、第1部「現存在を時間性へむかって解釈し、存在への問いの超越的地平として時間を究明する」から第1編「現存在の準備的な基礎分析」中、第2章「現存在の根本的構成としての世界=内=存在一般」の終わりで、脳細胞が燃え尽きたのである。

「現象(Phänomene)は決して〈現象〉(Erscheinungen)ではないが、その反対に、いかなる〈現象〉(Erscheinung)も現象(Phänomene)に依存しているわけである」

こんなに現象が現象する現象は怪奇現象である。

上下分冊は揃えるのが面倒だが、下巻を買う手間が省けたという意味で、はじめて分冊化をありがたく思った。

 

佐々木閑宮崎哲弥の『ごまかさない仏教』では、仏教の考え方について「難しいことを、いとも簡単にサラッといってのけます」と紹介されたスリランカ初期仏教長老アルボムッレ・スマナサーラ著『無常の見方』を読んだ。中身は読めるが名前が読めない。きみは、アルボムッレ・スマナサーラというこの高僧の名前をちゃんと頭のなかで発音しているだろうか。外人の変わった名前だと思って流し読みしたんじゃないか。僕は中身を二度読みしたが、未だに著者の名前を音声化できずにいる。

「『ディープ・インパクト』という映画では、隕石が地球に落ちてきて大災害が起こるのですが、あれを観て「すごく感動しました」という人がいます。どういうことでしょうか? 頭がおかしいですよ。そんなこと、実際にあったら大変ですよ」

『007』『スター・ウォーズ』は、殺戮と破壊のひどい妄想だと批判する。そんなこと言い出したらエンタメがすべてダメになる。仏教をテーマにした映画がつまらないわけだ(そんなもの観たことないが)。しかし引用箇所には賛成である。『ディープ・インパクト』は面白くない映画だ。感動すると言うのは頭がおかしい。

 

本を語ったのは、

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池澤夏樹の『読書癖』を紹介するためであった。

 

 

池澤夏樹といえば、カラフルな文学全集の編集者のイメージしかない。

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河出書房の日本文学全集、世界文学全集シリーズをひとりで編集しているのだから、その読書量、逸品を選り分ける眼識になみなみならぬ自信があるということだ。彼の書評を集めたのが『読書癖』である。見開き2ページ1,000字で1冊の紹介が完了する。夏休みはどうだとか、このあいだ浅間山に行った、という日記ふうエッセイのなかへ関係する本のはなしが出る。おもしろくはない。本のはなしも本人のはなしも腹三分、うすいピザ、ヨーグルトに浮いた水、刃先2cmのスコップ、子ども用のくつ、試食用ハム、スーパードライ135ml缶である。本について軽快な小文を書くというのは、読書ブロガーの夢でもあるので、今回はその真似をしようとしたが、なにも似なかった。それが僕の読書癖。で、このトーク

 


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