おならっぷばーん

You can't fart without changing the balance in the universe.

原稿締切に追われたい

 

パチンコ攻略誌にプレイ日誌を書くライターから、五大紙に政治記事を寄せるコラムニストまで、媒体問わずものを書くことで夫婦口を糊している文筆業者がきょうもせまる締切をツイートでなげく。天敵から逃れる不恰好を笑うが、求められる肉の美味をうらやむ。僕も締切に追われたい。「原稿終わらん。これじゃ徹夜だね、トホホ」ととほほきたい。

締切とはいつも抜きつ抜かれつだ。あさがおの観察日記は提出日の朝に書いた1日分、教授へ出すレポートは提出期限の3分前に「間に合いません」とやっとメール送信できた。学生を廃業し、始めた仕事はノルマもプロジェクトもアントレプレナーシップもない気楽なアルバイト。期限つきの課題提出から20年ぶりに解放されたのに、今度はその締切に追われたいと願っているのだから、こんなでたらめなことはない。僕という人間がでたらめなのか、でたらめなのが人間なのか、それすらでたらめにしか決定できないありさまである。

心の持ちようから実務まで、仕事のコツを教えるあらゆるビジネス書が、異口同音にまずは期限を設けろと、ミニにタコができるほど口酸っぱく説いている。それもそのはずだ。結局世のなかのビジネスというのは(と非正規社員が大上段にものを言えば)、約束の期日までに約束の作業を終えることであり、それはなつやすみのしゅくだいの延長、というよりそんな社会の第一ルールになじませるための宿題、テスト、パン食い競争というわけだ。期日までにきっちり課題を終える生徒、時間内にしっかり単語を暗記できる学生が、つまりよく仕事(学業)のできる人間が、華々しい学歴とともに実社会の中枢に近づいていくのは当然である。社会は計画的な人間を欲している。計画殺人の罪が重いのは、途中で踏みとどまる機会があったからというより、殺人という最低のルール違反に、計画性という近代最高の価値観を持ち込んでしまったからなのだ。人殺しは無計画な人間が、無計画に行わねばならない。ヤンキー娘にはできちゃった婚が、社長令嬢にはピルが必要なのだ。

ブログにしても、場当たりのセンスでものを見せたり、カエルの雨を望むようにインスピレーションを待ったりするよりは、プレーンに継続のしくみを作った人間が生き残るのだと思う。生き残るのが偉いわけではないが(無人島の長寿は幸せか)、趣味と確変は長く続いたほうがよい。

 

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自分で締切を用意する。投げるのも自分、守るのも自分。先生にやらされる義務感あってこそ、提出の先延ばしにあまい蜜が出る。自作自演じゃ、損するのは自分ばかり。ああツライわー。原稿っていうの? ちょっと締切に追われちゃってさ、いやほんとツライわー。ごめん今日飲みに行けないんだ、家帰って原稿やらなくちゃだからさ。カフェは多い日で1日3回は行きますね、原稿の締切に追われて仕方なくです(笑)。買ったばかりの新車をぶつけちゃったんですが、原稿の締切のおかげで安心でした。階段の上り下りのたびに膝が痛んで大変だったのですが、原稿の締切を巻くだけで楽になりました。妻から「締切」と聞かされたときは、まさか自分が原稿になるなんて思いもしませんでした、でも誰もが初めての原稿なんだと考えると頑張れる気がしました。794年、桓武天皇長岡京から原稿の締切に都を移した。原稿の締切、原稿の締切…。