GWとMJ

ブックオフがGW特別セール中で本が20%オフだったので、いろいろ買った。

平常時は、気になった本を片っ端からカゴに入れるMJ(マイケル・ジャクソン)方式で買い物するのだが、安い時にかぎって慎重に品定めしている矛盾に気づく。

こういうときこそ、普段なら絶対に買わないような、陶芸入門、電車の仕組み、叶姉妹のスタイルブックに手を出して、世事にたいする見識を広め、たびたび新聞広告に出てきては奇妙なインパクトを残す深見東州その人のように「現代のルネッサンスマン」を自任できるよう努力すべきなのだ。

(深見東州の正体は、信者10万人規模の宗教法人ワールドメイト」の代表。年間600回も新聞広告を掲載し、その費用は10億円を超える。なんという自己顕示欲。)

 

※参考資料(公式HPより)

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齋藤孝さん、貴方は「ヤバい」を語彙の貧困だと言いますが、この状況をなんと言いあらわすんですか?)


しかし、こうして「あいつは何者だ」と名を挙げて言及している時点で、まんまと深見東州の術中にはまっているわけだ。ブックオフにも彼の書籍はある(108円なり)。「ベストセラー」だという『強運』をぱらぱら読んでみると、本のなかに魔法陣のような記号がびっしり描かれた付録冊子がついていた。

聖なるチカラによって運が開かれる」と真顔で言われると、いくら「ゆとり教育」をもろに頭から浴びた身であれ、ものごとを合理的に考えるように仕込まれて育ったから、床がぐらぐらと波打つようなめまいに襲われる。

困るのは、科学的な話であっても専門性が高くなると、同じようなトリップ現象に見舞われることだ。たとえば、杉本大一郎エントロピー入門』(中公新書)。

本当に数学的な意味での無限の時間を考えると、原子の中心にある原子核も反応を起こす。温度が40億度より低いときには、水素も炭素も酸素も、すなわちあらゆる種類の原子核が反応して、原子核の中ではエネルギーの最も低い結合状態、すなわち鉄の原子核になってしまうのである。しかし1千万度以下の温度では、その反応時間は100億年という宇宙の年齢と比べても、はるかに長い。だから、ふつうの場合には、そこまで考えなくてもよいわけである。」(p.43)

風呂場で読んでいてこの箇所に差し掛かったとき、その40億度、100億年という破壊的なスケールの空間を、脚も伸ばせぬほど小さな湯舟に乗って進んだために、乗り物酔いと同じような症状に襲われた。いずれにせよ、ぼくは「そこまで考えなくてもよい」「ふつうの場合」に人生の活路を見出していきたいと思う。

尊敬するもう一人のMJ(みうらじゅん)は、その文体に松本清張の影響があると公言している。この取り合わせは意外だ。中田ヤスタカのポップな楽曲の背景に、19世紀のドイツロマン派フランツ・シューベルトの作風をみるような、辛酸なめこの軽妙なエッセイにフランスの啓蒙思想ヴォルテールの哲学を嗅ぐような、うどん屋でカレーそばを頼むような、美人の妻から似ても似つかぬ不細工な子どもが産まれるような、ノーパンの股ぐらで感じるデニム生地の荒々しさのような、違和感である。

ぼくは、MJみたいに肩まで髪を伸ばす度胸もないし、ギターを弾き語りする器用さも持ち合わせていない。ならばせめて、文体だけでもまねして彼に近づきたい。たまに身長150cmの女子大生が、8頭身の雑誌モデルの着こなしをそのまま真似て、水深3000mで圧縮されたカップヌードルの容器みたいになっていることがあるが、彼女と同じで、あこがれの人と同じものを身につけたいと思うのは自然なことであり、その結果がたとえ不自然なものになろうとも構いやしないのである。そんなこんなで初めて松本清張の本、『点と線』を買った。

やっと1冊目の紹介が終わる。ここ1週間で20冊は買ったのだが、この調子だと終わりが見えないので強制終了である。つづきは気が向いたらば。

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