おならっぷばーん

真夜中の異臭さわぎ

お財布

 

学生のとき、パチンコ屋で財布を落とした。さすがに持って行かれたか…とダメもとで店に確認すると、それっぽいのがあると言うので、店に出向いた。財布を見せてもらうと、間違いなく私のものだ。店員が財布をひらき、中身を確認しろと言う。カード類は無事だったが、お金が1円も入ってなかった。「やられた! 警察に連絡してください!」と言おうとして、ハッと我に返る。さっき有り金ぜんぶやられて、ぼろぼろに負けて帰ったところなのだ。店員はカラの財布を開いたまま苦笑いしていた。

パチンコ屋のトイレには、「パチンコは適度に楽しむ遊びです。ギャンブル中毒かもしれないと思ったらここに連絡」みたいなポスターがかならず貼ってある。用を足しながら、このポスター見てる奴はもう全員中毒だよ、とぼやいて勝負に戻る。

パチンコ業界を目指す人向けの専門学校がある。企画や映像製作はもちろん、パチンコ雑誌のライターを目指すコースもある。一時期、ライターコース卒業生の進路を、HPに掲載されているブログやツイッターをチェックして、追いかけていた。

卒業後にそのままライターとして就職できる人は、15人中1, 2人ほどだ。在学中に仕事が決まらなかった人は、パチンコ店のイベントに参加して有名ライターと交流し、素人参加型番組に応募してパチンコを打ったりする。もちろん自費だ。バイトを続けながらパチンコで勝ったり負けたりしている合間に雑誌社に書類を送って引っかかるのをひたすら待つ、みたいな生活を送る。

はた目から見ると悲惨だが、夢追い人は幸せである。

もし40歳の売れない芸人だったら? と想像することがある。いまさら才能がないと自覚してすっぱり廃業できるだろうか。「面白い奴はいつか売れる」という定説は、多くの芸人にとって励みになるが、自分の才能を疑わない奴には毒にもなる。

羨ましいのは、彼らが「やる/やらない」の選択肢で、リスクを背負ってでも「やる」人生を選んだってことだ。トライして失敗し続ける人間を負け組と笑いながら、いつまでも机上で理屈ばかりならべて行動しない奴より100倍マシな生き方をしてる。

 

 お題「お財布」

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