おならっぷばーん

真夜中の異臭さわぎ

実写版『ルパン三世』に言いたい

 

2回みた。ごめん嘘ついた。1回半です。2回目なら面白くなるかなと思って再生して、途中でやめました。

この映画、ネットでは「駄作だ」「がっかり」「見るに耐えない」という酷評と、そんな評判を聞いてハードルの下がりきった人たちの「うーん、いうほど悪くなかったけど」って擁護に分かれます。私は初見時こそ「うわっ」と思いましたが、2回目に「いうほど悪くない」派へ。この映画、冒頭30分まではおもしろいんですよ!

ばっかばか銃を撃ち、どっかどか物が壊れ、大きな爆発も起こる。邦画では見れないようなアクションで、正直この感じが続くなら、おもしろいぞ!とワクワクします。脚本術の教科書どおり、きっちり開始30分で、この映画におけるルパンの目標が決まる。父のように慕ってきた泥棒チームの親分が、目の前で殺されて財宝が奪われる。ルパンはそれを取り返すというシンプルな復讐劇です。

この後どうなるんだろ? と期待したところで画面が暗転、テロップ「1年後」とでて第2幕が始まります。するとルパンが次元に向かってこんなことを言う。「ぜんぜん足取りがつかめねえな。」そう、こいつら1年間探し回って、なんの情報もつかんでいないんですよ、敵の名前も顔も割れてるのに。もう無能集団にしか見えず、ダメな所ばかりが目につくようになる。同時に映画からテンポとスケールが消えていきます。誰かに盗まれたんでしょうか。

ダメ要因を探すとキリがないんですが、なによりもまず、ルパンのテーマが流れないのは大きな欠点です。もろもろの事情があってオリジナルテーマが使えなかったみたいなんですが、北村監督はインタビューでこんなこと言ってます。

「やはりあの(アニメの)テーマ曲を使ってしまうと、それはそれで結局はアニメの世界観に寄ってしまう。僕らが目指しているものはやはり新しいことをしたいということですから。」*1

実写やるからには新しいルパン像をみせるっていうのは分かる。でも、改変していい部分と、変えちゃいけない部分があって、オープニングテーマはまさに残すべきものの筆頭だったでしょう。画面にテキトーな絵があって、あのテーマ曲が流れてくるだけで「うわーおれルパン観てんなー」って思うんですよ。初めはキャラクターの格好もぜんぜん違っていて、ルパンは赤いジャケットではなく、五ェ門もライダースの現代風ファッションだったとか。でも、小栗旬や他の出演者が「こうしたほうがよくないですか」と提案して、ルパンは赤ジャケ、五ェ門は着物になったと。これは役者陣によるスーパーセーブです。もとのルパン像をそのまま実写化していたら、受けなかったと思います。

ルパン映画でおもしろいのは、ルパンがお宝を盗んだり、盗もうと思ったら、もっと大きな陰謀やら大事件に巻き込まれていって、結果的にルパンが解決しちゃうってところですよね。でもこの映画は盗まれて盗むだけ。一応、闇社会のボスを倒すって目標は達成するんだけど、その男が手を染めていると言われる武器の密売、人身売買の様子が1秒も映らないから、ぜんぜん悪人に見えないんですよ。ただのビジネスマンがやられたって感じで、倒したー!って爽快感はありません。史上最強のセキュリティ要塞とか出てくるのに悪人のスケールだけ妙に現実的です。

これが実写じゃなくてアニメだったら、脚本家の意図することが実現できたと思います。人間が演じてプラスになる部分があればこそ実写にした甲斐があるんですが、現実的な制約(予算とか物理法則とか)がもろに演出上のマイナスになっていて、実写化で得してることが1つもないんですよ、この映画。

たとえばルパンの得意技に変装があるんだから、それこそ『ミッションインポッシブル』のように、精巧な顔のマスクをかぶって敵地に忍び込み、バレるか!バレないか!のサスペンスもできたはず。でも真似するのは散々こすられてきた、赤外線センサーをバク転して避けるみたいなアクションだけ。赤外線センサーですよ。

それからキャラクター。

監督は言います。
「僕は、ルパンと次元と五ェ門と不二子と銭形をどれだけ魅力的に見せるか、それしか考えていない。それが正解だと思うんで」*2

現実はまったく魅力的じゃないんですね。一番ひどいのは、銭形です。ワゴン車のなかで張り込む浅野忠信が、モニターをみながら背を丸めてカップ麺を啜り「ぜんぜん動きがねえな」みたいなことを言うんですが、銭形らしさの記号としてカップ麺を食わされているようにしか見えず気の毒です。

銭形はルパン逮捕に命を懸ける男です。映画の途中で、彼はあっさりルパンを逮捕することに成功するんですが、そこでこんな取引を持ちかけます。

「捕まえたい国際的指名手配犯がいるんだが、そいつの逮捕に協力してくれたら、お前の犯罪記録を抹消して、逃がしてやるぞ」と。

ルパン逮捕のために地球の裏までやってくる男がそんなこと言いません。銭形にはルパン以上に逮捕したい奴なんていないでしょ。百歩譲って、捕まったルパンの方から「あいつを逮捕したいなら、おれを逃がしてくれ。おれが捕まえてやる」と持ちかけるなら分かりますよ。ルパンを利用する銭形がすげー悪い奴に見えます。

キャラといえば、天才ハッカーとして登場する丸メガネのおばさんですよ! 屋台で鳥をさばいてそうな、小太りのおばさんです。不二子がポケットマネーの150億円で買ってきたスーパーコンピューター(泥棒なら盗むか忍び込むかしろ)を使ってハッキングするんですが、いまどきキーボードをガチャガチャ打ち込むところをアップにして、「ハッキングしてます」って演出をするんです。サブキャラの男が「時間がない!間に合うのか?」と急かしても、おばさんが必死にガシャガシャガシャガシャするところだけを映すので、一体何をハッキングして、どう間に合わせたいのか分からないからハラハラしようがない。ぜんぜん知らない話で盛り上がる友人たちのそばで愛想笑いをし続けるときの疎外感にそっくりです。

実写って何でしょうか。
考えるきっかけになる良い映画です。おすすめします。

 

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