読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

おならっぷばーん

なにも考えずに、楽しむ

もういくつ寝ると

f:id:gmor:20151225140432j:plain

寝正月は、朝から酒を飲み、雑煮を食べ餅を頬張り、横になってよだれを両口角からだらーと垂らしながら、袴羽織で着飾る芸能人の賑やかしをぼけーと見守りつつ、まどろみ、まどろみから醒めては空いた胃袋のすき間にものを詰め込み、また眠る。動物園に「ヒト」が飼われたら、ガラスの向こうに見えるのは、全く同じような生態の動物だろう。日夜ぬかるみを走る馬車馬のように馭者から鞭打たれ働かされるのだから、1年のうち数日ぐらい人間であることの役目を捨てたって良い訳である。「人間やめるためにクスリやってんだ」とは有名な麻薬撲滅キャンペーンにたいするジャンキーからの尤もな反論だ。人間をやめるために、アルコールと炭水化物とテレビとコタツを用意しているのだと開き直って、怠惰を戒める連中をやっつけることもできる。

ところで私はベッドから一歩も外に出たくない。その気になれば、一日中横臥したまま、あれこれ過去の思い出を噛み締めて、ときどきツンとくる甘味渋味に身悶えしながら夜を明かし、のぼる陽の暮れるまで、無為に過ごしていられる。アラビア人に5発の銃弾を撃ち込んだムルソーは、刑務所で追憶にふけった。「たった1日だけしか生活しなかった人間でも、優に100年は刑務所で生きてゆかれる」(カミュ『異邦人』)。刑務所もシャバも変わりはしない。

ある出来事を1年後に想起すると、内容の40%は改変されるという。米国の心理学者は9・11テロ事件当日に何をしていたか被験者に訊ね、1年後、5年後、10年後と間隔を置いてから同じ質問をした。すると、早くも1年後に当初の発言内容と矛盾をきたし、年を経るにしたがって体験の原形は損なわれていった。記憶は再構成される。というより、そのつど再構成される不定形の過去こそが記憶なのである。開くたびに残高の変わる預金通帳がある。これをとりだして一喜一憂する遊びが追憶だ。1回の入金で100年生きてゆかれる理由である。

f:id:gmor:20151225135019j:plain

イヴに緑のマットを買った。このマットにはヤドクガエルの背中から抽出したプミリオトキシンという猛毒が散布してある。そりを曳くトナカイが芝と間違えてマットの毛羽をはみ、死んだところをさらってその肉を聖夜の晩餐とするためである。罠の前で夜通し張ったが、鈴の音はついに聞かれなかった。ああ記憶よ、イヴの夜に舞い上がってこんなくだらない買い物をしてしまった思い出をいますぐ改変してくれたまえ。

 

ドーナツツーシーター田代まさししんどさ作詞ショッピングセンタータンジェントTalking with Script Doctorらも→もういくつ寝ると→?

広告を非表示にする