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おならっぷばーん

なにも考えずに、楽しむ

大津があるから津が小さく見られる。大森さんと小森さん、大西さんと小西さんの関係である。実際、滋賀県の大津は「大」がつくほど大したことはない。

私は、高校3年の夏休み、 クラスメート3人とともに、大阪の北摂から琵琶湖まで自転車旅行した。午後10時に集合し、国道171号線をひたすら北上する。京都を経由して琵琶湖に着いたのは午前3時過ぎだ。

私たちは焦っていた。だだっ広い湖面のほかに何もないからである。なんでも「ノリ」で片付けるバカ高校生に、宿をとっておく頭はない。到着後どうするのかを計画する冷静さも真面目さもない。体力だけが取り柄である。それでも、さすがに休憩しないと自分の家に帰れないことを動物的な勘で察していた。タオルを巻いた汗くさい男4人組でコンビニにぞろぞろ入店し、店員さんを取り囲んで、寝る場所はないかと訊く。地図を広げて、ここにネットカフェがあると教えてくれた。「あそこでネットカフェがなかったら、俺らほんま終わってたな」と後日、みなで笑ったものである。もちろん、恐ろしくて笑うしかないのだ。ネカフェのソファで4時間ほど仮眠したあと、私たちは雲ひとつない晴天下に出た。

それは、すべてのものを溶かしつくす、容赦ない夏の日差しであった。睡眠不足による倦怠感と頭痛、両足の筋肉痛に苦しみながら、トラックの脇腹から放たれる排ガスの熱風を頭から浴びて、ゆらゆら湯気立つアスファルトの上を12時間かけて進み、なんとか家に帰った。日焼け跡が服のもようを写しとるように、滋賀大津と聞けば、「何もないくせに行き帰りがしんどい場所」というイメージがくっきりよみがえる。

題を裏切って、大津の話ばかりしてしまった。正直にいうと、いままで津市に入ったことがない。鈴鹿市までが最接近である。ネットで津市のことを調べて、多くのことを知った。世界一短い地名としてギネスブックに登録されているとか、いちご大福発祥の地であるとか、ドン小西の出身地であるとか。

ドン小西はずっと東京人だと思っていた。インタビューによれば、ファッションブランドの経営に失敗して、47歳で15億円の借金を背負った。再起のきっかけは、TVプロデューサーから与えられた「ドン小西」の名で、芸能人の服装を評価するファッションチェックだった。なるほど、はた目には「なにを偉そうに人の服に文句つけてんだよ」と彼のパーソナリティにチェックを入れたくなるが、それは彼が生きるために使える唯一の武器だったわけである。モードの世界と縁ない私には、その切れ味の鈍麻鋭敏、判断つきかねるが。

 

ドーナツ→津→?

 

参考)
連載「ふくびと」ドン小西 〜逆境を乗り越えた半生〜| Fashionsnap.com

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