情報のフローにいかに身をさらすか

あなたに、のぞき趣味はありますか。
のぞきという言葉がまずかったら、「人間観察」はどうでしょう?

電車で向かいに座った人の髪型、服装、持ち物をチェックする。この人は金持ちそうだな、家で煮物つくってそうだな、裁縫が得意そうだな、渋い顔のしたにとてつもない変態趣味を隠してそうだな。そんな風に相手の人となりを想像することがあるでしょう。

私はWebでも同じことをしています。まったく知らない人のTwitterアカウントをいくつかピックアップして、フォローはしないまま時々チェックしたり、ブログでも読者にならないで毎日せっせとアクセスを重ねたりするものがあります。

友人に「いや、この○○くんていうのがさ」とTwitterでウォッチングしている人のことを話すと、「友達でもないのにそんな話し方するな、気持ちわるい」と突っぱねられました。たしかに気色のわるい趣味ですが、やめられません。

その人の発言がとくべつ面白いわけでも、なにか生きるヒントになるわけでもありません。「まーた、こんなこと言ってるよ」と思うだけです。今日の晩飯はカルボナーラだとか、TVで歌謡ショーをみてたらカラオケ行きたくなってきたとか、その程度の内容です。

でも、とにかく何かが更新されていないと、つまらない。脳の報酬系は、実際に報酬が得られたかどうかではなく、得られそうだと期待することで活性化するといいます(ビンゴ大会でリーチがかかった時のことを思い出してください)。「もしかしたら、なにか発言してんじゃねえか」と思ってリンクを開く、画面をスワイプする一瞬が楽しいので、実際にでてくる景品が100円ショップのキーホルダーみたいなものだとしても、決して気落ちすることはありません。

視点を入れ替えましょう。自分が書き手のときは、とにかく内容を気にして臆病になりがちですが、じつは内容の出来にかかわらず、更新することがすでに現象として、おもしろいのです。ブログの書き方を説くハウツーサイト、書籍をみても、まずは継続することが大事だと教えます。それは書き手の技術向上にむけたアドバイスですが、単純に読む側からして、更新されていることが喜ばしいのです。

 

"There are no stupid questions. The only stupid question is the one not asked."
(バカな質問というものはない。唯一のバカな質問は、訊かなかった質問だけだ。)

という言葉があります。これにひっかけて、次のように励ましたい。
「つまらない記事なんかない。書かなかった記事だけが、唯一つまらないものだ。」

 

創造の恐怖を乗り越えたところで、次のステップへ進みましょう。

どうやって話題を探すか、作るか、生み出すか、という問題です。これを突破するために、ブログTips「あなたの創造性を高める10の方法」とか「いいアイデアを得るための7つの行動」みたいな記事を乱読しました。やる気は高まります。そのやる気をつぎこむ場所は見つかりません。多くのライフハック系サイトは、農夫にむかって豊作の祈りを捧げますが、水の撒き方までは教えてくれないのです。

肝心の素材をどうやって探すのか。これには、自分の目を養う方法と、ふれあう情報そのものの量を多くする方法があります。

日常ありふれた素材を新鮮な切り口で扱うには、詩的な才能が必要です。すぐに真似ることはできません。これが得意なのは、作家、お笑い芸人、CMクリエイターなど、人の意表を突くような創作を仕事にしている人たちです。その眼力が天性のものなら、求めるだけむなしく、後天の性質なら、得るまでに膨大な努力を要します。

私は生来のめんどくさがり屋で、そんな薄皮を重ねていくような努力はまっぴらご免です。もっと簡単な方法で済ませたい。そこで、接する情報量を増やす選択肢を採ります。さしあたって問題は、情報のフローにいかに身をさらすか、と言い換えることができるでしょう。

書籍から情報を得ることはカッコいいと思います。ブログ記事にWebサイトのURLではなくて、本からの引用文を書きつけると得意な気分です。とはいえ読書は、体力を使います。崖の壁面に生えた一輪の赤いバラを探しに行くのではなくて、はじめからバラ農園に案内してほしい。そんなわがままな人のために、自動的に情報収集してくれるWebサービスがあります。本がもっとも信用に足るメディアであると考える人には、ちょっと抵抗があるかもしれません。

学校で学んだことを捨てましょう。大学は「すべて60点で"可"」という人生最大の処世術を与えてくれますが、同時に「Wikipediaのコピペでは点がつかない」という強迫観念を植えつけもします。学生たちは時代遅れの教授陣から、紙にくらべるとネットの情報が無条件に劣っていると見なすような、時代錯誤の態度を身につけていきます。そんな学校敷地内の常識にとらわれる義理はありません。ブログなんてものを書きながら、旧来のメディアの威信ばかりを利用しているのは、最新鋭の設備に囲まれて暮らす老人が「昔のほうが良かった」と威張るようなものです。

本だけを唯一の情報源にすると、フローというには程遠い経験しか得られません。時間と体力をやたら食うわりに、報酬は微々たるものです。「本こそ情報収集の王道である」として他を寄せ付けない態度をあらためて、ネット上のおもしろいモノを集めてくれるWebサービス(Pinterest, Feedly, Pocket)を利用することにしました。1つだけでも、毎日すべてに目を通せないほど「これどうですか?」と提案されます。

山にわけ入って清流をたどるのが読書なら、小さい河川の集合した大河を渡るのがこの方法です。速い流れにもみくちゃにされて、何がなんだか分からない。溺れながら藁をつかみますが、それはたいてい陸にあがる頃にはゴミになっています。それより大事なのは、皮膚下に水分が浸透して、手足がふやけることです。情報のフローに身をさらすことの主眼は、干からびた身体に潤いを与えることにあります。乾いたところにインスピレーションが生まれる余地はありません。

 


最後に「これは!」と思ったブログTipsを紹介します。 

How to Write with Substance

”Write to express, not to impress”
(表現するために書け。印象づけるために書くな)

この忠告には、ひやりとします。賢くみせたいとか、人望があるようにみせたい場合に、似つかわしい語調と語彙をつかって、文面を潤色することがあります。人に好印象を持たれようとして、ひ弱なアイデアをもっともらしく膨らますことから、コミュニケーションの不和は始まるのです。

 

The Ultimate Guide for Becoming an Idea Machine - Altucher Confidential

"アイデアマシーン"になるために「1日10個のアイデアを書くこと」を勧めます。4,5個までなら、スムーズに浮かびますが、そこからが難しい。脳みそが汗をかき始めます。私たちは汗をかくことで代謝をあげ、体内から老廃物を吐き出し、新しい細胞を作ります。ジムでエクササイズするのと同じように、アイデアの筋肉=脳を鍛えるべしと説きます。

これを読んで、1日10個のアイデアを書き出してみました。が、2日目は筋肉痛のせいで2個が精一杯でした。しかし、この方法によると1年に3,650個のネタができるわけですから、ブログを書くに困ることはなくなるわけです。チャレンジする価値はあります。

  

15 Outstanding Tips for Blog Writers from Popular Bloggers | Write to Done

"毎日、数えきれないほどのブログポストが更新されています。もはや「新しいこと」だけでは、不十分です。読者はものを見抜く力があります。彼らは、読んでいて気持ち良くなるような、質が高くて役に立つ、おもしろいコンテンツを求めているのです。"

1、2時間で書き飛ばしたものは悪くない。しかし、良くもありません。これは冒頭の私見「とにかく更新するだけでおもしろい」と衝突します。たしかに、みんなと同じことをやっていても仕方がありません。世間で「センテンスを短く句切れ」というアドバイスが通用しているなら、あえて長文を書くのも一便法です。「たくさん改行しろ」をうけて、改行しないでいるのも素敵です。みんなが時間をかけないで記事を作成しているなら、ゆっくり丁寧に書くことで、ほかにはない違和感を打ち出せると思います。ただし、みんなが頻繁に更新するから、わたしはなるべく息を潜めておこう、というのは間違いです。世の中には、品質と頻度を高い水準で両立させている人がたくさんいます。要は、時間と質をいかにマネージメントするかです。

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