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おならっぷばーん

なにも考えずに、楽しむ

「スイーツ男子が食べくらべてみました! いま話題のパンケーキの店in大阪」のはなし

ジャッキー・チェンは女子受けしないのだろうか。

大学で受けたホームページ制作の授業。じぶんの好きなものを紹介するページをつくる、というのが課題だ。ぼくは迷いなくジャッキーを選んだ。授業の合間はPCルームにいりびたり、休日には家でも制作に励んだ。プロフィールからおすすめの映画まで、ネットでできるだけ資料をあつめて、丹念にページを作り上げていった。

いざ発表日、生徒がお互いのページを見て、5点満点で評価をつける。男子のなかには、ジャッキー愛を共鳴させて最高点をつけてくれる人がいた。たいして、女子の評価はのきなみ低い。「0点です。ジャッキーのことよく知りません、好きじゃありません」というコメントまで頂いた。いや、ジャッキーが嫌いだから0点じゃなくて、ホームページの形式的な出来栄えを評価してくれよ! テーマで評価されるなら、もっと媚び媚びの、『マニアでも知らないディズニーランドのナゾ・不思議20』とか、『スイーツ男子が食べくらべてみました! いま話題のパンケーキの店in大阪』にしてたわ!

もっと露骨にいくなら、毛並の汚いミニチュアダックスフンドを使う。助けてくれと言わんばかり、うるんだ瞳でこちらを見つめる写真を拾って、次のキャプションをつける。
「保健所で処分を待っている子です。命を粗末にするような飼い主は絶対に許せません」
これで同情票を買うことができる。ウサギで生体実験した化粧品をばんばん使いながら、かわいい犬の惨めな末路についてだけはひどくご執心の慈母から、5点をもぎ取ることができる。

点数が下がったという理由で、そのときだけ、だめだけど、ジャッキーのことが嫌いになりかけた。結局、単位はもらえなかった。出席日数をころっと忘れていたからだ。

 

女の子の映画の原体験ってどんなものだろう? 聞いたことがないから分からない。想像では、シンデレラみたいな、ロマンスファンタジー系アニメーションだと思うのだが、あまりにステレオタイプ化された見方だろうか。女性を主人公にした映画が、そもそも少ない気がする。というか、映画産業じたいがとても男性的なのだ。

ニューヨーク・フィルム・アカデミー制作の、おもしろいインフォグラフィックがある。

 

New York Film Academy takes a look at gender inequality in film

 

2007年から2012年までに公開された映画500本のなかで、登場した役者の平均男女比は2.25:1。会話の7割は男性キャラクターによるものだ。こうしたフィルムの中だけじゃなくて外、つまり映画製作の現場でも男女に大きな違いがあるというのが分かる。監督、脚本家、プロデューサー、編集者、撮影者。どの仕事も圧倒的に男性が多い。数字からみれば、映画は男による男のためのものだ。女子の原体験になりそうな映画をすぐに想像できないのは、そんな事情によるのかもしれない。

幼い頃、おばあちゃんの家でテレビをつけたら、ちょうど『失楽園』というテレビドラマの激しい濡れ場が展開されていた。おばあちゃんは、慌ててぼくの目を覆い、「毒になるからあっち行きなさい」と言った。今更そんなもの毒にもならなかった。団地の仲間とともに、ゴミ捨て場をまわって「刺激的な」マンガを探し求めるツアーを、週3で敢行していたからである。たしかに自分が親なら、暴力とセックスが描かれた映画を幼い娘に観せたくない。しかし男の子なら? 肉弾戦や銃撃戦で人を倒していく「男らしい」映画を観ていても、「毒になる」といってあわてて目を隠すだろうか? 毎週日曜、ヒーロー戦隊が光線銃をつかって怪人をこっぱみじんにし、大剣でまっぷたつにしているのに?