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おならっぷばーん

なにも考えずに、楽しむ

「夏祭り」のはなし

盆踊り大会に行ってきた。

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駅前という場所柄か、公園グラウンドは満員電車に負けないひとの集まりだ。じっと立っているだけで四肢に汗がつたう。ぼうぼう揺らめく提灯の列が、中央に建つやぐらにむかって伸びている。やぐらは鉄パイプで組まれた急ごしらえのものだが、それなりに立派にみえた。壇上ではアニメ一休さんの主題歌にあわせて大太鼓が弾かれる。熱気と人いきれ、マンションに反響して空に抜ける「すき、すき、すき、すき、すきっすき、あ、い、してる」という轟音。正常な思考がはばまれてくると、夏祭りに来たという感じがする。

盆踊りの輪のなかに女装した中年男性をみつけた。猫耳のカチューシャをした男が、節のごつごつした手を打ち鳴らし、ふくらはぎの張った脚をはらって一心に舞っている。その光景にふしぎと嫌悪感はない。踊り乱れ、ふだん抑えつけた性癖をほとばしらせる彼は、この会場でもっとも祭りをというものの本質を体現している人物であった。しかつめらしい顔をして白いテントの下にすわる運営委員の連中のほうがその点よっぽど変態である。

 

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露店をみていると、わたしが子どものときより明らかに値段が上がっているのに驚く。100円だったくじびきが今では300円だ。「子どものくらしとお金に関する調査」によると、小学生のおこづかいは大体1000円で、祭りだと臨時の追加もある。それにしても1回300円というのは、彼らにとってもはや手ぬるい遊びの額ではない。そのぶん賭け事としてのおもしろみは高まっているが、よっしゃやったろかいと腕まくりするちびっ子ギャンブラーはどれほどいるだろうか。値段ばかりが上がったのではない。景品をみると、ずいぶんと品質のいいものが出ている。いちばん下のハズレでも昔の中当たりぐらいの玩具が用意されている。小学生のころ何回もくじを引いて、やっとのことで先っぽに磁石のついた金属の伸びる棒を射止めてガッツポーズをしていたが、あれは結局どう使うものだったのだろうか。

 

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同級生の女の子と合流した。2人とも幼児を育てる立派なお母さんだ。くじびき、射的、わなげと数ある夜店のなかで、子どもたちがなにをしたがるのか気になって観察していると、どうやら金魚すくいがやりたいようだ。小さい子どもいる家庭で飼われる金魚の供給は、ほとんど露天商によって担われているのではないか。私の家でも、すくった金魚を10年ほど育てていた。遊びにいく家々にも、たいてい金魚鉢があった。3歳の男の子はじぶんで獲った金魚がビニール袋のなかを泳ぐさまを見て、何度も指でつまんで捕まえようとした。「そんなことしたら死ぬよ」とお母さんから諭されていたが、彼には生き物が死ぬということが分かっていないらしい。子どもが残酷であるゆえんは、死の観念の欠如にあるとそのとき思った。祭りに飽きて入ったファミレスで、結局その子はビニールの中身をぶちまけてしまう。テーブルの上におどりでた金魚は口をパクつかせ、尾びれで空を掻きながら前に進んだ。

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