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おならっぷばーん

なにも考えずに、楽しむ

台風の日にむりして外出した結果

台風である。

せっかくの休みを家でひたすら寝食に費やすのはもったいない。そう思ってむりに外へ出た。小雨でも靴先が濡れて不快になるのに、この暴風雨だ。きっと足元がぐじゃぐじゃになって外出中ずっと嫌な気分になる。そこで一計を案じ、川や浜辺で履くようなサンダル靴をひっぱり出してきた。水をよく透す繊維で編まれた本体にすべり止めのゴムがついたシューズで、歩いてよし濡れてよしの優れものだ。

その真価を試すように、ふだんなら大股でやり過ごす水たまりにわざと足を突っ込んで歩いた。豪雨でいつもより伸びて深くなった水たまりは踏みごたえがある。踏み入れた足の甲にわっと冷たい水が走り寄ってくる感触などは、だらりと雨水のしみた革靴と靴下の関係性からは決して得られないものだ。水面をばりばり割って進みながら、じぶんの靴選びの正しさを誇った。

本屋に入って映画雑誌を開いてみるものの中身が一行と読めない。歩いているときには気付かなかったが、じっと立ってみると、足が痛くて痛くて仕方がないのである。動いていれば適度に分散される体の重みが、静止したとたんに両足を襲うのだ。これがふつうの靴ならば足の負担を軽くしてくれるのだが、この日えらんだのは、インソールのない薄っぺらの水陸両用靴である。靴裏に張りついたゴムはちょうど目玉焼きのとおなじ厚みで、すべり止めにはなっても、クッションの働きまではしてくれない。せっかく大雨洪水警報のでるなか、さした傘を二度裏返しにし、背負うリュックをずぶ濡れにして色を変えてまで本を読みに来たのに、よりにもよって一番雨に強いはずの靴のせいですべてが台無しになるとは思いもしなかった。かかとが刺すように痛み、アキレス腱が張る。途中いい気になって水遊びをし過ぎたせいで、唯一の生命線であった靴底のゴムまでがべろべろと本体から剝がれ始めた。接着剤が劣化していたのである。崩壊しつつある靴をいたわりながら、往路とは反対に、今度は水たまりを極力踏まないように苦心して帰った。

 

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