おならっぷばーん

真夜中の異臭さわぎ

『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』感想


こんな記事を読んだ。

careersupli.jp

スゴ本の1冊目に紹介されているのが、
井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』だ。

 

 

ところで、わたしは
好きな作家の筆頭格に、井上ひさしを挙げている。

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著作もそれなりに集めた。

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でも、本作は読んだことがない。

 

いままで食指が動かなかったのは、井上ひさしによる別の指南書・『自家製 文章読本』をすでに読んでいたからである。こっちは日本語の文法、言語としての特徴に切りこんだ読みごたえのある一冊で、これを読破したあとに、今さら本作のような入門者向けの本を読む気になれなかったのである。

 

とはいえ「文章術」と聞けば、どんなにつまらないリンクも踏まずにいられない性癖で、ことばの壁もなんのその、うまい英文の書き方を教える本まで読んできた。

 

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(William K. Zinsser. On Writing Well: The Classic Guide to Writing Nonfiction.
受動態やbe動詞を使うと文章が弱くなる。文章を転がすのは動詞だ。動詞をつかって文章にモーメンタムを与えよ。など示唆に富む。英語で日記をつけようと思って買った。二日間天気の話をして辞めた。)

 

もはや文章が上手くなりたいのか、文章論を読みたいだけなのか、自分でもわからない。近ごろはやけになって、上達を唱えるものなら手あたり次第に買い求めている。

 

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加藤秀俊『自己表現』(中公新書
山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(PHP新書
立花隆『「知」のソフトウェア』(講談社現代新書
板坂元『続 考える技術・書く技術』(講談社現代新書

 

名前も知らない、好きでもない人の書いた文章論まで手に入れた。それでいて、じぶんの好きな作家の『作文教室』を読まないのでは、筋が通らない。このタイミングで紹介記事をひらいたのも、なにかの縁だと思って、買って読むことにした。

 

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井上ひさしの赤が入った原稿が表紙だ。そのなりからは想像もつかないギャルのような丸文字を書く。)

 

講演を文字に起こしたもので、井上ひさし自身が書いたものではない。分量もすくない。しかし、今まで読んだ文章読本のどれより胸にひびいた。これを読めただけで買った価値がある、と思える一文に何度も出会った。 

 

 いちばん大事なことは、自分にしか書けないことを書くことです。自分にしか書けないことをだれにでもわかる文章で書く。これが出来たらプロ中のプロ。ほとんどノーベル賞に近いですよ、これは。(笑い)p.31

 

自分にしか書けないことって何だろう?
と考えることが大事だ。みんな同じように生きているが、細かいところはちょっとずつ違う。その微妙な違いにこそ表現する価値が宿っている。ところが、いつも同質の集団に埋もれていれば、じぶんの経験の特殊性に気付けない。みずからの立場をとらえ返すには、広い視野としなやかな考え方、それに勇気が必要だ。他人と向き合うことなく、じぶんと闘うことなくして、いいものを創ることはできない。

 

頭のなかに書きたいものがいっぱいあります。それをし終えて、頭のなかをからっぽにして死んでいきたい。そのためには一分、一秒、寸暇を惜しんで書いていかなければならない。p.270

 

わたしはこの箇所に、作家を生業とする人間の本性をみた。

 

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