誰より一番多くの本を読んでいた

小学校でまちがいなく誰より一番多くの本を読んでいた。

まちがいないと言い切れるのは、図書委員をやっていて、だれがどのくらい本を読んでいるかすべて把握していたからだ。そして一番であった理由は、委員の特権をつかってスタンプを自由自在にあやつり、図書カードにありもしない架空の読書記録をつけていたからである。

十五ページの絵本をもってきて、カードに貸し出し印をおす。おしたその場で絵本をぱらぱらめくって最後まできたら、先についた判子のインクが乾かないうちに今度は返却の印を叩く。これを繰り返して、片面に二十冊の記録がのこる図書カードを三枚も四枚も重ねてホチキスで留めていた。熱心に図書館にかよう児童でも二枚を超えないところに、堂々の四枚綴じである。

たんに見栄を張るために偽装していた、というのではない。じつは二十冊を読むたびに先生のつくった特製のしおりがもらえる決まりになっていて、それ欲しさに記録を水増ししていたのだ。大人がみればすぐにバレる不正だが、最後まで規定どおりにご褒美をもらい続けた。そのしおりの管理も図書委員の私がやっていたからだ。なるほど人は権力を持つと腐る。しかし、これだけわずかな権限をもって腐敗した人間というのはそういまい。

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