毎日ブログネタを探すのに苦労している人がぜったい読むべき本

山名宏和『放送作家が教えるアイデアがすくすく育つ思考のヒント』を読んだ。これは、毎日ブログネタを探すのに苦労している人がぜったい読むべき本だ。


著者の山名さんは『ガイアの夜明け』や『家庭の医学』、『ダウンタウンDX』といった人気番組を手がける放送作家だ。放送作家のしごとは、番組のコンセプトを練り上げることから、毎週の企画内容を考えること、そして出演者がどのように動くかを決める台本作りまで、多岐にわたる。どのプロセスも、今までにないようなおもしろいものをつくるという信念で貫かれており、放送作家はそのためのアイデアを出すプロとして雇われている。

これは、山名さんの平均的な1日のスケジュールだ。

十一時・虎ノ門で会議。
十三時・汐留で会議。
十五時・同じく汐留で会議。
十七時・恵比寿で会議。
二十時・赤坂で会議。 (p.258)

1日に5つの会議に出て、アイデアを出し続けるのが放送作家の「普通」なのだ。

そんな毎日を送っていれば、否が応でも考える力がついてきます。それは、トレーニングで鍛えた筋肉ではなく、肉体労働をしているうちについてしまった筋肉のようなものです。(p.259)


私たちは、なにかを考えるために毎日10時間を費やすことはない。それもそのはず、そんなに毎日考えごとばかりしていたら、普通の生活が送れないからだ。私たちの日常は、深く考えないで済むように工夫されたルーティンで構成されている。残念ながら、発想力の筋肉は、決まりごとの海を泳ぐあいだは刺激されることがない。そもそも発想力を鍛えようという発想すら生まれてきやしない。だからいざアイデアを出せと言われると、困るのだ。毎日ブログを更新すると決めてはじめて、じぶんの力不足に気がついた人も多いのではないか。

そこで頼りになるのが、この本だ。おもしろいアイデアを出す職業のプロが、普段からどんな技をつかって実際に着想を得ているのか丁寧に書いてある。この手のジャンルは、抽象的なアドバイスの羅列になりがちだ。純粋な理論は美しいが、作者の経験的証拠に裏づけられていないものは説得力がない。そんな本を読むと「この作者はホントにこの方法で成果あげてんの?」と疑いたくなってくる。ところが本書はそこが違う。著者の山名さんは、私たちの日常生活の体験レベル、たとえば歯医者に通ったり、焼き鳥を食べたり、ATMでお金を引き出したり、といった場面から、着想のヒントをとり出して、常識的でつまらないモノゴトの見方をその場で一変させてしまう。これは見事な手腕だ。エジソンの発明秘話を引いて講釈を垂れるようなダサいまねは一切しない。この本が数ある発想本のなかで好感を持てる理由がここにある。

本書は、2014年に『大人の宿題』という題で刊行されて、文庫化の際にいまのタイトルに改題された。元のタイトルに「宿題」とあるとおり、35のトピックごとに発想力を高めるための課題が用意されている。たとえば、こんなものだ。

自分の弱点を三つ以上挙げ、それぞれについて、その弱点があったからこその体験を思い出してみましょう。

十代の異性になったつもりで、自分と同世代の人々の姿を観察してみましょう。

毎日、自分が使っている日用品を選び、その日用品のどこがどう今と違っていたら違和感を覚えるか、考えてみましょう。

なーに低レベルな、と思った人は実際にこたえを書き出してみてほしい。きっと思うようにいかないはずだ。そんな風になにかと理由をつけて、じぶんの頭を使わないでいる典型的なサボり症の人にこそ読んでほしい本なのだ。ネタ不足に苦しんでいる人もこの本を読むべきだ。宿題をたんたんとこなしていくだけで1ヵ月分の記事が書けてしまうし、そのうち発想のしかた、スタミナまで身について次第にアイデアの生産エンジンが自転しだす仕掛けが施されているからだ。ここまでお膳立てされて動き出さない脳みそなら、もう捨てちまえー!