地獄を体験しているならそのまま突き進め

「地獄を体験しているなら、そのまま突き進め
(When you're going through hell, keep going.)」
ってウィンストン・チャーチルの文句が好きだ*。

負けが込んでいるギャンブラーに送りたい言葉ナンバーワンの本作。ところで、チャーチルはどんな状況でこんなことを言ったのか?調べた結果、意外な事実がわかった。

名言の起源をさぐるサイト「Quote Investigator」によると、チャーチルのこの言葉じつはチャーチルが言ったものではない。1990年のオレゴン州の地方新聞にでた、自己啓発系の作家・カウンセラーのダグラス・ブロッホの記事がもとになっているらしい。チャーチルの死後に、宗教家やモチベーターのあいだで創作、流用された便利フレーズだったのだ。遠景でカワイくみえた女の子がじつは若作りのおばはんだったときの、舌うち換算で2発になるガッカリ感。このことばが好きでチャーチルも好きになったわたしはいま地獄を体験している。

知人女性が、いまのストレスフルな仕事を辞めるかどうか凄く悩んでいたとき、わたしは彼女を励まそうと思って、このフレーズをLINEしようと思った。「もういやだ」「いきたくない」地獄の仕事場にすこしでも立ち向かう勇気が湧けばいいと考えたのだ。でも結局、タイミングをのがして送らなかった。翌日彼女は仕事を辞めた。あの時このことばに出会っていれば、彼女の状況は変わっただろうか?

べつに地獄的な状況を耐え忍ぶことが美徳と思わない。このフレーズの美点は、絶望的な環境、逆境でもじぶんの主体性を見失わないでいることの大切さを教えてくれるところだ。状況に操作されるのでなく、あくまでじぶんが状況を操作するのだという決意に、「あらスゴイですねえ」を感じるのだ。 

*訳・本文ともデイビッド・セイン、佐藤淳子(2009)『世界のトップリーダー 英語名言集』Jリサーチ出版による。

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