最近こんな本買いました

 

寒くなりましたね。
外出しない理由が増えてうれしいです。

 

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成毛眞は『大人げない大人になれ!』の冒頭で、創造性とは平凡な発想からの逸脱だ、「みなと同じ経験をし、みなと同じ本を読み、みなと同じことしかできない人はお呼びでない」と言う。そのことばに触発されて、新刊文庫や新書、ランキングコーナーを素通りして、ふだんめったに入らない店の奥地で、本を選びました。

 

 

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  • 林道郎『静かに狂う眼差し――現代美術覚書』
    山口昇『ヘンな日本美術史』

 

おなじ美術を語るにしても、林は美術史の教授で、山口は画家である。ならべて読むと、研究者と実作者の鑑賞のしかたが違っていておもしろい。

一方は間主観性ジャック・ラカン唯物論的な自己反省というワードを駆使して、絵をコンセプチュアルに読みとくが、もう一方は筆さばき、絵の具や紙の画材選定など、著者の実体験に即した絵画技法のレベルから作品を掘り下げていく。どっちが好みかと訊かれたらどっちも好きだが、今まで学者先生が書いたアカデミックな評論しか読んでこなかったから、後者がより楽しい。画家といえば岡本太郎の本も何冊か読んだが、すぐに「エネルギーがパァーッ」みたいな説明になっちゃうから、なんか凄いということしか分かりません。

 

 

  • Tropic of Cancer, by Henry Miller

 

Amazonで観た『園子温という生きもの』で、園子温が自宅のキッチンテーブルの書類の山から本書を手にとり、 

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「僕のバイブルです」
と紹介するシーンがあったから、買った。

原題"Tropic of Cancer"をみて、ずっと熱帯地方のガンのはなしだと思い、原書がどこにもないと嘆いていた。これで「北回帰線」って意味なのだ。本篇1ページも進まずにタイトルで挫折である。

 

 

 

 

山崎さんのブログで、

論理哲学論考』に挑戦したという記事を読み、俺もいつか読もうと思っていた。古本屋で見つけたが、わけのわからない論理学の記号と式がページ一面に出てきて、これはムリだと悟った。

数ヶ月後、本屋でこの解説書を見つけて、中身がおなじみの日本語で書かれていたので、これなら読めると踏んだのだ。本書冒頭の一節、

この薄い著作を検討するのに三年かかった。石の上でもがまんしていれば何かいいこともあると言い伝えられている年月である。そんなにかかったのかという感想もあるだろうが、よく三年で終わった(というか、そもそもよく終わった)という声も聞かれた。まことに、『論理哲学論考』というのはそういう著作なのである。

を読むだけで、ゾクゾクする。

 

にしても、ウィトゲンシュタインは凄い。
序文で「問題は本質において最終的に解決された」と書いて、哲学問題のすべてを解いたと宣言してしまう。俺も「この記事をもってブログのあらゆる話題は、本質において最終的に解決された」とか言ってみたい。 

 

完璧な買い物

 

私は完璧な存在である。

いままで間違いを犯したことがない。どんなに厄介な問題でも、頭のなかの高度な論理演算機構がすぐに最適解を導いてくれる。世界史で有名な人間風に言うならば「私の辞書に失敗の文字はない」のである。

しかしそれでは生活が窮屈だ。車のハンドルが指先1ミリの動きにいちいち反応していては、運転に神経をすり減らす。健全なシステムは、誤差を許容するバッファーを備えているものだ。ハンドルにも生活にもある程度の遊びが必要なのだ。なんでも完璧にこなしてしまう私には、いや完璧だからこそ、大きな失敗が必要なのだ。

電器屋で過失機を買ってきた。店員によると、
「こいつは89年式の機械でして、ちょうどゆとり教育の実施された年代のものですから、それはもう大失敗作でございます。おまけに職人夫婦の家でたった1台の機械として大切に生産されましたから、自己愛が強く、周囲に甘えてばっかりで、自立の精神がまったく欠けている。稼働28年にして未だ大きな成果なし。大学受験に失敗、予備校通いに失敗、就職に失敗、公務員試験に失敗、なんとか近所のスーパーにアルバイトの口を見つけたものの、まじめな勤務に失敗、職場の人間関係に失敗、せっかく貰ったわずかばかりの給料をすべてギャンブルにつっこんで失敗と、失敗を数え上げたらキリがありません。きっと家に置いたその日から大活躍してくれることでしょう」
高性能を謳っても、結局ものごとを首尾よくこなしてしまう機械が多いなか、私が掴んだものは、どうやら本物らしい。

 

これは早速、愚かな考えを抱いた。
「手とか顔が乾燥して粉っぽくなってる。新しい加湿器を買おう」
これはすでに自分の加湿器を持っているが、手入れを怠ったせいで、吹き出し口からラグビー部の部室のようなニオイがする。消臭機能が売りの加湿器がくさい空気を出してどうする、と頭にきていた。知り合いの女に、ほんの会話の糸口として、オススメのものがあるかどうか尋ねたら、
「いま欲しいのがあるんだよね。一緒に買わない? おそろにしようよ」
と言われた。
加湿器をお揃いで買うなんてバカバカしいと思ったが、ひょっとして俺に気があるのかもしれない。そうだ寒いから一緒に暖め合うのもいいな。おたがい乾いているところを濡らし合うんだ、と想像ふくらませて、言われるがまま注文を出したら、なんのことはない、そのメーカーの商品を2ついっぺんに買うと200円安くなるのであった。女にとってこの過失機は、安い割引券の価値しかないのである。

 

これは届いた加湿機を前にして、めずらしく賢明に考えた。

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部屋の湿度はどうなってるんだ?

 

湿度計を買ってから気付く、

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部屋がぜんぜん乾燥していないことを。

 

これが感じた乾燥は、たんにこれに水分が足りないせいであった。結局これは、買った加湿機を一度も使うことなく、箱に入れたままにしている。

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私の部屋の失度は高い。